◆プロ野球日本シリーズが熱い。ブログでも書いた通り、横浜ベイスターズファンの僕は、クライマックスシリーズからおおいに楽しんでいる。ファイナルステージで敗れたのは残念だけど、相手が今季の広島カープなら仕方ない。そのカープがパ・リーグの覇者、日本ハムファイターズと日本一を争う。2戦終わった段階で広島の2連勝。もちろんまったく勝負の帰趨はわからないが、165キロのストレート、フォークでも150キロという正真正銘の怪物・日ハムのエース大谷投手が先発した初戦を獲った広島に分があると思う。
◆「神ってる」といわれるほど今季のカープは勢いがある。2位のジャイアンツに17.5ゲーム差をつけて25年ぶりのリーグ優勝を決めた。広島カープって、そんなに強かったっけ?カープと言えば、万年Bクラス、5位が定位置とのイメージだ(ちなみに6位はベイスターズの定位置)。しかし、実際には13年、14年と2年連続で3位、Aクラス入りを果たしている。そのころから着実にチームは変わり始めていた。このコラムでも取り上げたことがある(2014年8月8日【新潮流】第59回「日焼け」)。
◆若手選手がある時を境に急成長して活躍するということはある。弱いチームがまぐれで勝つことも、たまにはある。しかし長いペナントレースを制するのは、やはりチーム全体の地力である。そして地力は一朝一夕に身に付くものではない。カープがどうしてここまでの地力をつけるに至ったかの分析はスポーツ誌等に譲るとして、言いたいことは、カープは一夜にして強くなったわけではないということだ。長年にわたる戦略的強化やファン・スポンサーの応援が徐々に効果を発揮してきた。そうした積み重ねの延長に今季があり、一気に花開いたということなのだろう。
◆相場も同じである。ある時を境に「潮目が変わった」かのように相場つきががらりと変わることがある。例えば、当時の野田首相が衆院解散宣言をした途端にアベノミクスの大相場が始まった。黒田バズーカ2が放たれると相場は一気に吹き上がり、日経平均は2万円超えまで駆け上がった。しかし、衆院解散宣言にしろ黒田バズーカにしろ、それらは「きっかけ」に過ぎない。相場用語では「カタリスト」というが本来の化学用語では「触媒」という意味だ。相場の潮目が一夜にして変わったかのように見えるが、実はそこに至るまでに必要なプロセスを時間をかけてこなしていたのである。機が熟していたからこそ、そのタイミングで触媒が投じられると化学反応が大きくなったのだ。
◆相場と同じ、と述べたが、もうひとつ共通点がある。毎年、プロ野球のシーズン開幕前に優勝チームの予想が野球評論家やスポーツ記者などから出されるが、広島の優勝を予想したひとはほとんどいなかった。クライマックスシリーズのファイナルステージをカープとベイスターズで争うことになるなどと誰が予想できただろう。評論家の予想が当たらないのも相場と同じである。