デフレ脱却、ゼロ金利解除で経済拡大が見込まれる不動産大手
大手不動産の株価が堅調に推移している。直近では公示地価で土地の値段の上昇が示された点が評価された。
日本は長期のデフレ下からの脱却で、ようやくゼロ金利が解除されたばかりの段階にある。経済の正常化はオフィスビル需要の増加、分譲不動産への購入意欲の増加などに繋がる。不動産の中でも、オフィス賃貸、分譲、ホテル事業、再開発などを総合的に手掛けている不動産大手に経済拡大の恩恵が大きいと言える。
不動産大手の関連銘柄でチェックしておきたい3つのポイント
ここで、不動産大手関連銘柄の注目ポイントを3つ挙げておきたい。
(1)オフィス需要が増加
不動産仲介大手の三鬼商事が2月に発表した2024年1月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は、前月比から0.20ポイントが低い5.83%となった。オフィスの移転・拡張需要が堅調だったことが要因と報じられている。
オフィス空室率が6%を割り込んだのは2021年5月以来2年8ヶ月ぶりのこと。2020年以降のコロナ禍では「オフィス不要論」も台頭した時期があったが直近では人材獲得や出社の動機付けのために、好条件のオフィス需要が拡大している。供給過剰の目安とされる5%に向けて需給の改善がさらに進む公算が大きい。
(2)分譲不動産(マンション・戸建て)への購入意欲の高まり
マンションの販売も堅調に推移している。不動産経済研究所が2024年1月にまとめた「首都圏 新築マンション市場動向 2023年のまとめ」によると、2023年の発売は前年比9%減の2万6,886戸。各社が好立地などの選別で供給を絞っていることが要因とみられ、平均価格は8101万円で、前年比1813万円(28.8%)の上昇となっている。
同研究所では2024年の供給戸数は3万1,000戸(前年比15.3%増)を見込んでいる。理由は明らかにしていないが、各社が需要増加を見込んでいることが想定される。住宅ローン金利は変動でやや上昇も、賃上げなどで購入意欲が高まっている。また、円安に伴って、海外投資家が割安感から投資対象として魅力的に映っている可能性も高い。
(3)旅行需要の増加でホテルの稼働率が増加
経済再開による旅行需要増、インバウンドの増加などでホテル運営も好調に推移している。コロナ禍前の2019年は1ドル108円程度だったため、インバウンド客にとっては円安で割安感が強まっている。
一例を挙げると三菱地所(8802)が運営している「ロイヤルホテル」は2024年3月期の第3四半期(10~12月期)の客室稼働率は78.8%であった。コロナ禍最中の2021年3月期の第1四半期(2020年4~6)の4.7%を底に回復し、直近が最高稼働率となっている。
今後さらなる成長が見込まれる不動産大手関連銘柄5選
ここで、不動産大手に関連する注目銘柄をピックアップする。
三菱地所(8802)
丸の内地区でオフィスビルを数多く手がける。別名「丸の内の大家」。現在は東京駅日本橋口付近で東京駅前常盤橋プロジェクト「TOKYO TORCH」を開発中。2027年度にはランドマークであるトーチタワー(高さ390メートル)が竣工予定。「ロイヤルホテル」を運営している他、アウトレット「プレミアム・アウトレット」も多数展開。マンション分譲でも大手の一角として知られる。
三井不動産(8801)
三菱地所と並ぶ不動産総合大手。オフィスビル賃貸は日本橋を軸に東京都心5区が中心。分譲マンションでも首位級。商業施設は「三井アウトレットパーク」、「ららぽーと」ブランドで展開している。「三井ガーデンホテル」を筆頭に、ホテルの運営室数1万3,300室と首位を誇る。
住友不動産(8830)
総合不動産大手。1970年代のオイルショックによる経営危機を経て、オフィスビル開発に注力。オフィスビル賃貸が主力で、開発物件は自社保有を前提としている。マンション分譲でも大手で、ホテルは「ヴィラフォンテーヌ」ブランドなど5,000室以上を展開。
東急不動産ホールディングス(3289)
電鉄大手の東急系。不動産大手の一角。東急とともに本拠地である渋谷地区の「100年に1度」といわれる再開発を実施中。ビルの賃貸が主力。不動産仲介は「東急リバブル」として展開している。渋谷再開発一角の「サクラステージ」はオフィス、商業施設、ホテル、住宅などの複合施設となっている。
東京建物(8804)
旧安田財閥系の不動産大手。主力はビル賃貸。都心高層ビルを多数保有している。本社がある東京八重洲1丁目(東地区・北地区)で大型再開発が進行中。渋谷2丁目でも再開発案件が進む。マンションは「ブリリア」ブランドで展開。ホテル開発・運用、自社運営も手掛けている。