◆映画の祭典、第87回アカデミー賞の授賞式が現地時間22日、米国のハリウッドでおこなわれた。作品賞は『バードマン あるいは(無知がもたらす 予期せぬ奇跡)』にオスカーが贈られた。今日の小欄は、時節柄アカデミー賞の話題から始めたが、取り上げるのは米国のハリウッド映画の対極とも言えるフラ ンス映画である。ヌーベルバーグの巨匠、ジャン=リュック・ゴダール監督の最新作、『さらば、愛の言葉よ』である。僕は銀座のシネスィッチと横浜のみなと みらいにあるシネマコンプレックスとで2度この映画を観たが、さっぱり意味がわからない。その点では紛れもなくゴダール監督作品である。

◆オフィシャルサイトの「ストーリー」にはこう書かれている(フランス語のサイトではゴダール監督の手書きで記されている)。

人妻と独身男が出会う。ふたりは愛し合い、口論し、手を上げる。一匹の犬が町と田舎を彷徨っている。季節はめぐり、男と女は再会する。犬は気付くと ふたりのもとに落ち着く。他者が個人の中にいて、個人が他者の中にいる。そして登場人物は三人になる。かつての夫が全てを台無しにし、映画の第二幕が始ま る。第一幕と同じようで、それでいて同じでない。

ポイントは、「映画の第二幕が、第一幕と同じようで、それでいて同じでない」というところである。

◆日本株の強さが目立ってきた。昨日、日経平均は4日続伸し、一時は1万8500円の節目を超えた。2000年5月初旬以来の水準だ。アベノミクス 相場第二幕が本格化してきたと言われる。しかし、今回の第二幕、2012年末から始まった第一幕とは同じように見えて相違点がたくさんある。出遅れていた 金融株など主力大型銘柄中心で新興市場の銘柄などはあまり上昇していないこと。外国人主導だった第一幕に比べ、今回は国内の信託銀行(すなわち年金資金) などの買いが目立つこと。ドル円相場が膠着するなか株が高値を追っていることも特徴のひとつだ。そのほかにもいつくもの違いがある。

◆映画の冒頭、「想像力を欠く者はリアリティに逃げ込む」という言葉が3Dで迫ってくる。目に見える事象、言葉で綴ることのできる動き、それらに惑 わされてはいけないのだろう。映画の第二幕は、第一幕と同じようで、それでいて同じでない。設定は同じだが、人妻、男とも俳優・役名が変わっている。後半 では、人物配置などの構図も前半と左右逆になっている。マルクスは「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」と言った。「歴史は、同じ ようには繰り返さないが韻を踏む」と言ったのはマーク・トウェインだ。さてアベノミクス相場、第二幕、この先にいかなる展開が待っているのだろう。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆