ISM非製造業指数で相場反転
2023年の新年相場
1年前と今回の米ドル/円では、水準はほぼ10円違っていた。1年前の2023年1月第1週の米ドル/円は2022年にやり残した形となっていた130円の大台割れをトライするところから始まった。
130円割れはすぐに実現したものの、その後は米ドル反発に転じると、注目の米雇用統計発表までに4円以上と、むしろ米ドルは大きく上昇した。そして迎えた米雇用統計発表で、注目のNFPは事前予想20万人増を上回る22万人増となった。これを受けて米ドル/円はいよいよ135円を越えそうなムードとなった。
ところが、米ドル/円の上昇は135円を越えられずに終わり、間もなく132円割れの急反落に一変したのだった(図表1参照)。きっかけとなったのは、雇用統計発表から1時間半後のISM(米供給管理協会)非製造業景気指数発表が、予想55.1を大きく下回る49.6という「ネガティブ・サプライズ」となったことだった。
2024年の新年相場、1年前の「アナロジー」が展開
さて、2024年の1月第1週の米ドル/円は、1年前よりほぼ10円高い140円割れを視界に入れた水準での取引スタートとなった。前月までの急落を受けて米ドル先安観は根強かったものの、むしろ注目の1月5日(金)、雇用統計発表までに4円以上の米ドル上昇となったのは、すでに見てきた1年前との類似(アナロジー)と言ってよいだろう。
その上で、発表された雇用統計は、注目のNFPが事前予想16万人増を上回る21万人増となったことで、さらなる米ドル買いトライとなったものの、この動きはすぐに失速。そして間もなく発表されたISM非製造業景気指数が、事前予想の52.5を下回る50.6と発表されると、米金利低下に連れる形で米ドルも一時144円割れへ急落となった(図表2参照)。
以上のように見ると、1月第1週の米ドル/円の値動きは、1年前と水準は異なるものの、相場変動のきっかけなども類似した点が少なくなかったと言ってよいだろう。相場の類似した値動きを「アナロジー」と呼ぶが、米ドル/円の新年相場はこれまでのところ1年前の「アナロジー」が展開したと言えそうだ。
1年前、2023年は雇用統計発表の1月6日に米ドルは急反落で、いわゆる長い「上ヒゲ」が出現。翌週明けに改めて米ドルの上値の重さを確認すると、日銀の金融緩和見直しへの警戒として米ドル売り・円買いが再燃し、米ドルは一段安に向かった。では今回はどうか?
2024年も、1月5日、雇用統計発表後に米ドルが急反落に転じるきっかけとなったISM非製造業景気指数だったが、1年前の「ネガティブ・サプライズ」ほどのインパクトはなかったせいか、「上ヒゲ」とともに「下ヒゲ」も長く、このまま米ドル安・円高再燃に向かうかどうかはまだ微妙かもしれない。
ただその一方で、米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率は、1年前は年明け早々短期的な「下がり過ぎ」懸念の目安であるマイナス10%近くまで拡大していたのに対し、今回はほぼニュートラルな状況であり、短期的な「下がり過ぎ」についてはかなり差がありそうだ(図表3参照)。
1年前は、すぐに米ドル/円の下落再燃となったものの、間もなくそれは行き詰まり、結果的には「年内最後の円高」となった。これに対して今回は、米ドル/円は「ニュートラル」から上下ともに「行き過ぎ」拡大を試す余地は大きい状況にありそうだ。特に米ドル/円に大きく影響する米金利の動向などを手掛かりに、上下ともに新たな方向への動きが始まる段階にあるのではないか。