予測不能のリスクから身を守る術は心構えのみ

前回のレポート(『2024年のリスク その1』)では、「マーケットにとってリスクシナリオとは、現在のコンセンサスが裏切られることである」と書いた。市場から離れて一般に「リスク」と言えば、「危険」という訳語が当てられるのが普通だろう。我々日本に住む者にとって地震が大きな「リスク」であることを改めて思い起こさせるような新年の始まりとなった。震災だけでなく、飛行機事故、電車内での通り魔事件と年初から立て続けにショッキングなニュースが飛び込んできた。それらは予測不可能であり、我々は意図的にそれらの「危険」から身を守る術を持たない。できるのは心構えだけである。事前に、そのようなことも(いや、どのようなことも)起こり得ると想定しておくことだ。地震については常日頃から、飛行機に乗ったら事故が起きるかもしれない、電車に乗ったら通り魔に遭うかもしれない、という考えを頭のどこかに入れておくことだ。人間、常に緊張していられるわけもないし、そんな必要もない。しかし、100%慢心していられるほど、世の中は甘くないので、最悪の状況に対する想定はしておくことに越したことはない。

国際分散投資の重要性が認知される中、日本株の投資妙味に期待

投資に関して言えば、国際分散投資の重要性が改めて認識されるだろう。円資産、日本株だけでなく海外に投資する必要性の理解が進むだろう。ちょうど新NISAが始まったタイミングである。S&P500やオールカントリー・インデックスへの投資ばかり増えて、日本株に資金が入って来ないのではないかという議論があるが、S&P500やオールカントリー・インデックスへの投資は正解である。それを否定するつもりはない。ただ、いまの日本株は非常に投資妙味があるので、これに投資しない手はないと主張している。

震災の影響は限定的だがインバウンドの減少には見守りを要するだろう

さて、昨日の「マーケット展望」(『大発会の相場展望』)でも述べたことだが、今回の震災のマーケットへの影響は限定的だった。今日(1月5日)後場寄り時点で日経平均は昨日の下げを取り戻し、さらに2023年暮れの大納会の終値を上回って推移している。結果的に昨日、一時700円安超まで下げて長い下ヒゲを引いたチャートの形が底堅さを示したことになった。円安を追い風に、ナスダックの5日続落を跳ね返す強さを見せている。

ここ一両日の日経平均の動きを見れば、確かに、短期的には震災の影響は大きくなかったと言えるかもしれない。しかし、もう少し長い目で見れば、負の影響が懸念される。それはインバウンドが減るかもしれないということだ。改めて日本は地震大国であること、そして日本の地方には耐震構造が弱い地域がまだ多くあることなどが海外に知られれば、外国人観光客の訪日意欲をそぐかもしれない。日本経済や日本株相場をけん引する柱のひとつであるインバウンドへの影響を注意深く見守っていきたい。