3年連続で円「売られ過ぎ」で迎える年末
CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、先週までの段階で売り越し(米ドル買い越し)が10万枚以上となっていた。10万枚以上の売り越しは、経験的には「行き過ぎ」、つまり円の「売られ過ぎ」懸念が強いと言えるものだ。
今回のように11月初めにかけて投機筋の円売り越しが10万枚以上に上っていた年は、2015年以降では2017年、2018年、2021年、そして2022年と4回あった(図表1参照)。
この4回のうち、2021年と2022年は円の売り越しは10月末でピークアウトし、年末にかけて売り越しの縮小に向かった。2017年の円売り越しピークは11月半ば、そして円売り越しのピークが最も遅かったのは2018年で12月上旬だった。要するに、米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いは、2021年と2022年は早く、一方で2017年と2018年は比較的遅かった。
ポジションの手仕舞いのタイミングに影響したのは相場動向もあったのではないか。2021年と2022年の米ドル/円は大幅な米ドル高・円安が進んでいたのに対し、2017年と2018年は比較的小動きだった(図表2参照)。
前者では、米ドル/円の大幅な上昇により米ドル買い・円売りポジションは大きな利益を上げていた可能性があったのに対し、後者の利益は限られたのではないか。大幅な利益を上げていた2021年と2022年は利益確定で米ドル買い・円売りポジションを手仕舞う動きも比較的早く始まったということではないか。
行き過ぎのドル買い・円売りポジション。年末にかけて手仕舞いによる米ドル安加速にも注意を
2023年も、ここまで米ドル/円は比較的大きく上昇した。その意味では、2021年や2022年と同じように、米ドル買い・円売りポジションは大きな利益を上げている可能性がありそうだ。その意味では、過去の経験からすると、利益確定の米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いは比較的早まるのではないか。
2022年の場合は、10月までの米ドル高・円安から、11月以降米ドル安・円高に急変すると、大規模な米ドル買い・円売りポジションは、年末にかけて大きく縮小に向かった。米ドルの急落により、米ドル買い・円売りポジションの損益確定が急拡大し、そんなポジションの手仕舞いによる米ドル売り・円買いが一段と米ドル下落を後押しするといった具合に影響したと考えられた。
2023年の場合も、ここまでの米ドル高・円安の中で、米ドル買い・円売りポジションは大きな利益を上げている可能性が高そうだ。そんなポジションの利益確定が広がるなら、徐々に米ドル高・円安の動きも鈍くなる可能性があるだろう。また、2022年のように、この先米ドル安・円高が勢いつくようなら、米ドル買いポジションの手仕舞いが拡大することで、米ドル安・円高を加速させるリスクにも注意が必要かもしれない。