◆「ググる」とは、(知らない人はいないと思うが)インターネット検索エンジン「グーグル」で検索することである。英語でも"Google"は日本と同じように「検索する」という意味の動詞として使われており、ウェブスター英語辞典にも載っている。

◆「ググる(Google)」が「検索する(Search)」という意味の言葉と同義になることが、リスクと捉えられた時期があった。グーグルがその商標権を失いかねない、という危機感である。実際に、あまりに商標が一般化した結果、衰退していった企業は少なくない。60年代、「ヨーヨー」の商標を持っていた米玩具メーカー、ダンカンは、ヨーヨーの販売シェアで圧倒的なトップ企業だったが、「ヨーヨー」の商標を失うと、あえなく倒産してしまったのは有名な話である。

◆グーグルが商標権を失い衰退する - そんな懸念は杞憂だった。グーグルは先週19日で2004年の上場から丸10年。ますます発展を遂げるこの企業について多くのメディアが特集を組んだ。先週、休載していた小欄も遅ればせながらこの話題を取り上げた次第である。

◆グーグルはどこに行こうとしているのだろう。スマホ、自動車、無人ヘリ、AI(人工知能)。確かに多方向に膨張しているようだが、根底にあるのはテクノロジーへの絶対的な信念である。そこが日本のIT企業がおこなう「事業の多角化」(という名のもとの場当たり主義)とは決定的に違うところだ。もちろん、ヨーヨーのおもちゃメーカーとは比べるべくもない。

◆なぜグーグルがその商標を失わないのか?それは"Google"=「検索」にとどまっていないからである。日本の広辞苑のような辞書には「ググる」はまだ載っていない。しかし、この言葉が一般の辞書に収録されるのは時間の問題だろう。その時には、きっとこのような記載になるのではなかろうか。

ググる 【ぐぐ・る】[動詞ラ行五段]①(インターネットなどで)検索する ②(ウェアラブル端末で)案内される ③(自動運転の車で)目的地に移動する...⑩その他グーグルの機能でできるすべての行為

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆