株式市場は遂に日経平均で34,000円を目前に足踏み状態となっています。33年ぶりの高値水準にある中、急ピッチの上昇への警戒感もあり、一旦日柄調整に入ったというところでしょうか。しかし、これはむしろ健全な調整と受け止めています。

引続き、私は追い風局面の継続を想定し、警戒しなければならないのは相場格言にある「靴磨きの少年」の出現との見方を続けたいと思います。波乱要因があるとすれば、7月下旬の日銀政策決定会合でしょう。それまでは金利動向に関して、神経質な動きになるのではと想像しています。

生産者人口が減少する日本、人手不足は各産業で深刻な問題に

さて、今回は「人手不足」をテーマに採り上げてみましょう。このテーマはアベノミクス以降、長く日本経済における大きな問題として認識されてきました。コロナ禍直前の有効求人倍率は1.6倍を超えてバブル景気時の水準を上回り、60~70年代の高度成長期に匹敵する水準に達していたのです。コロナ禍によって人手不足感は一時的に緩和されましたが、エッセンシャル業務においては、この間もずっと人手不足という状況に変化はありませんでした。

現在はポストコロナ下における経済活動の急改善を背景に、人手不足感は再び全業種で急速に広がってきています。実際、有効求人倍率も直近で上昇に転じました。生産者人口が今後はさらに減少する中、人手不足は各産業の抱える深刻な問題として再浮上してくる可能性は高いと考えられます。

人手不足を解消する3つのポイント

そういった問題に対し、企業も対応を進めています。女性活用の推進やDX/AIの導入などによる業務効率化、さらには従業員のリスキリング支援など、確実にやってくる生産者人口減少局面に向けて、その準備は加速してきているといって良いでしょう。

特に最近はリモートワークの普及からデジタル対応が一気に進んだこともあり、DX/AIによる業務効率化を指向する動きも進んでいます。さまざまな領域でChatGPTのような生成AIが活用できないか、といった試みも散見されるようになってきました。

人手不足は慢性的な経済の重石になるのでしょうが、だからといって、それが経済成長を止めてしまうような悲観的な未来に繋がっているとは限らない、と私は考えます。人間は誰しも問題点が特定できれば、その解決に向けて知恵を絞るものです。

つまるところ、人手不足解消に向けての当面の方策は、海外労働者の活用、DX/AIなどによる省力・省人化、女性や高齢者を含めた既存人材の活用(リスキリングを含む)、の3つしかないのです。今現時点において各企業は実際にそういった対策を急いでおり、正しい方向を向いているのだと位置付けられます。今後はそれを如何に加速させるかが焦点になってくるでしょう。

人材派遣や紹介、人材育成など株式市場の観点から注目したい関連銘柄

一般的に、株式市場において人手不足がテーマとして注目されるときは、往々にして人材派遣や人材紹介、人材育成という業態が主となります。これは上記でいうと既存人材の活用に主眼に置いた方策と位置付けることができるでしょう。

こういった人材サービス業界の主要なプレイヤーは、リクルートホールディングス(6098)、パーソルホールディングス(2181)、アウトソーシング(2427)、パソナグループ(2168)などです。

また、人材ニーズの特に大きいエンジニア人材に特化したテクノプロ・ホールディングス(6028)、オープンアップグループ(2154)、メイテック(9744)などは、人材サービス業界の中でも特徴あるポジションを構築していると言えるかもしれません。

人手不足の緩和や解消、あるいは人材のミスマッチ解消が今後さらに求められるとすれば、こういった企業群には継続的な追い風が期待できるのかもしれません。

人手不足の抜本的改革、そして国際競争力維持にはDXやAI活用が必須

しかし、人材の再配置を如何に進めても、肝心の仕事量を抑制しなければ人手不足の緩和や解消効果は限定的にならざるを得ません。より抜本的な問題解決を探るうえでは、業務そのものの効率化が不可避と言えるでしょう。上記でいう省力・省人化への方策です。

DX/AIの活用はまさにそのカギを握るテクノロジーと言えますが、現時点ではこれらテクノロジーの導入に対しては企業間でかなり温度差があるようにも感じられます。また、DX/AIはグローバルで急速に浸透が始まっていることも看過してはいけません。つまり、世界各国の競合企業もまたテクノロジーの活用により省力・省人化を進めているのです。ここで乗り遅れると、単に人手不足問題が長期化するだけでなく、相対的に自社の国際競争力そのものにも黄色信号が灯ってしまうリスクがあるのです。

そもそも気合と根性と人海戦術だけで、これからの生産者人口減少トレンドをカバーできるはずはありません。DX/AIの導入成果が顕在化するには時間を要するでしょうが、そういった挑戦に積極的な企業だけが逸早く人手不足を解消することができることになるはずです。

是非、労働生産性の引上げに向けて、テクノロジーを活用する意思があるかどうか、投資を考える企業のHPなどで確認してみてください。これは将来を労働生産性の面で期待できる企業を見極める有効なプロセスになると考えます。