◆東京の夏は浅草のほおずき市から始まる。それから2週間が経ち、関東地方も梅雨が明けた。週末の隅田川の花火は雨の心配はなさそうだ。東京だけでなく日本全国、本格的な夏の訪れである。京都では夏の風物詩、祇園祭がたけなわを迎えている。夏は祭りの季節。株式相場に縁がある祭りと言えば、大阪天満宮の天神祭である。「節分天井」「彼岸底」と並んで「天神底」と言われ、株式相場は天神祭の頃に底値をつけやすいというアノマリーが知られている。

◆アノマリーとは、理論的な説明根拠はないが頻繁に起こる市場の振舞のこと。上述の「節分天井」「彼岸底」などをはじめ、いろいろなアノマリーが観察されている。ところが今年は例年見られるパターンとは逆の展開になっている。(詳しくは昨日のストラテジーレポート『サヨナラは8月のララバイ』をお読みください。)

◆アノマリーそのものが変化しているケースもある。例えば「8月の円高」。8月は円高になりやすいと言われるが、実際に調べてみると最近は7月のほうが円高になっていた。かつては8月が円高になりやすかったのだろう。しかし、そうしたアノマリーが知られるようになると、「それじゃあ前もってドルを売っておこう、円を買っておこう」という投資家が増えるのは想像にかたくない。こうして今や「7月の円高」になっているが、いずれ「6月の円高」と言われる日が来るのもそう遠いことではないだろう。

◆天神祭のアノマリーは「天神底」が一般的だが、実は「天神天井」とも言われている。その頃に天・底をつけやすい、すなわち転換点を迎えやすい、ということなのだろうが、底なのか天井なのか、いったい「どっちやねん?」という関西弁のつっこみが聞こえてきそうだ。水の都、大阪の夏を彩る天神祭は明日から始まる。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆