メキシコペソ/円と英ポンド/円

円安傾向が続く中で、一部のクロス円には「上がり過ぎ」懸念が強くなってきた。メキシコペソ/円の90日MA(移動平均線)かい離率は10%以上に拡大してきた(図表1参照)。また英ポンド/円の90日MAかい離率も10%に接近してきた(図表2参照)。両通貨ペアとも過去の実績を見る限り、かなり短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなってきた可能性がありそうだ。

【図表1】メキシコペソ/円の90日MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
【図表2】英ポンド/円の90日MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

こうした通貨ペアの「上がり過ぎ」懸念は、決して短期的な相場循環に限ったことではないようだ。メキシコペソ/円の5年MAかい離率は、最近にかけて40%以上に拡大。確認できる限りでは中長期的にも空前の「上がり過ぎ」の可能性がある(図表3参照)。

【図表3】メキシコペソ/円の5年MAかい離率(2006年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

次に英ポンド/円の5年MAかい離率を見てみよう。これも最近にかけて20%以上に拡大してきた(図表4参照)。1998年や2015年には同かい離率がさらに30%前後まで拡大したこともあったが、それにしても最近の場合もかなり中長期的な「上がり過ぎ」懸念が強まっている。

【図表4】英ポンド/円の5年MAかい離率(1995年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

上述のように、英ポンド/円の5年MAかい離率が30%前後まで拡大した1998年と2015年は歴史的な米ドル高・円安が展開した局面でもあった。以上のことから想像されるのは、米ドル高・円安傾向が続く中で、相対的に高い金利のクロス円の中には、米ドル/円以上に行き過ぎた上昇相場が展開する可能性があるということではないか。

その意味では、米ドル/円の上昇から下落への転換は、これまで見てきたメキシコペソ/円などの「上がり過ぎ」が反転するきっかけになる可能性があるだろう。実際、2022年後半以降のメキシコペソ/円の急落は、2022年11月上旬、2023年3月上旬に起こったが、前者は「CPIショック」、後者は「SVB(シリコンバレー銀行)ショック」と呼ばれた米ドル/円の急落局面だった。米ドル/円の急落に巻き込まれることで、メキシコペソ/円の「上がり過ぎ」の反動が入ったと考えられた。

【図表5】メキシコペソ/円の推移(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上を整理してみる。今回見てきたメキシコペソ/円、英ポンド/円など、クロス円の一部には短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなってきた通貨ペアがある。こうした通貨ペアは、米ドル/円の上昇が続く中ではさらに「上がり過ぎ」拡大に向かう可能性があるものの、米ドル/円が下落に転換すると、「上がり過ぎ」の反動から米ドル/円以上に下落するリスクもありそうだ。そして、下落に転じると、すでに中長期的にも「上がり過ぎ」懸念が強いことから、後から振り返った時には上昇トレンドの終了だったという可能性もあるのではないか。