南アフリカランド/円、急落の理由
南アフリカランド/円が先週、2021年12月以来の7円を一時割れるまで下落した。直接のきっかけは、南アフリカが秘密裏にロシアへ武器を提供していた疑惑が浮上し、対米関係悪化への懸念が浮上したことだった。
ただ、南アフリカランド/円の下落は既に一年近くも続き、この間の最大下落率は21%以上に達した(図表1参照)。2022年10月の151円からの米ドル/円の最大下落率は16%弱なので、南アフリカランド/円の下落はそれを大きく上回っている。
南アフリカランド/円は、2022年6月には9円近くまで上昇した。これは、5年MA(移動平均線)を1割も上回るものだった(図表2参照)。南アフリカランド/円の5年MAかい離率が今回のように10%程度まで拡大したのは2008年のリーマン・ショック前以来になる。
リーマン・ショック以降、同かい離率はプラスになることが少なかったことを考えると、2022年に9円近くまで上昇した動きは、かなり「上がり過ぎ」懸念が強くなっていた可能性がある。その意味では、この1年弱で2割以上も南アフリカランド/円が急落した主因は、「上がり過ぎ」の反動ではないか。
南アフリカランド/円は最近にかけて5年MAを5%程度下回ってきた。ただ、この10年余り、南アフリカランド/円の5年MAかい離率は0からマイナス30%程度の範囲で推移してきたことを考えると、まだ「上がり過ぎ」の途上に過ぎない可能性もありそうだ。
メキシコペソ/円、「上がり過ぎ」の可能性
これまで見てきた南アフリカランド/円とは対照的に、同じ新興国通貨と位置づけられながら高値更新が続いているのはメキシコペソ/円(図表3参照)。では、メキシコペソ/円と南アフリカランド/円は同じ新興国通貨ではあるが、なぜ状況が違うのか。
メキシコペソ/円は、5年MAを3割以上も上回っている(図表4参照)。既に見てきた南アフリカランド/円以上に、5年MAを大きく上回り、その意味では南アフリカランド/円以上に記録的な「上がり過ぎ」の可能性がある。
「バブル」に象徴的なように、相場は行き過ぎることが珍しくない。ただし、メキシコペソ/円は過去の実績から見ると「上がり過ぎ」である。程度差はあるものの、同じ新興国通貨の南アフリカランド/円では「上がり過ぎ」修正が本格化している可能性があることを見ると、いずれそれがメキシコペソ/円にも波及する可能性に注意が必要ではないか。