みなさん、こんにちは。日経平均株価は1月央からの堅調な推移が続いています。第3四半期の企業業績は、かなり失速感が見られますが、それもほぼ織り込み済みであったということなのでしょう。
同時に、注目していた日銀総裁人事のあらましも見えてきました。こちらは金利政策の先行きに対し、株式市場はやや消化難というところの反応となっています。今後の株式市場は新総裁の方針が見えてくるまで、かなり神経質な展開になるのかもしれません。
上場廃止のリスク、またはスタンダード市場への移行へ
さて、今回は「暫定プライム株」をテーマに採り上げてみましょう。ご存知の通り、東証は2022年に市場区分の見直しを行いました。その際、東証1部上場ながらプライム市場の上場基準に満たない企業は、将来、基準を満たすべく、企業価値を引上げる経営計画の提出を条件として、暫定的に約300社がプライム市場に残ることが可能となりました。
ただし、ここで求められた経営計画には、経過措置の適用期限が明記されていなかったことから、時間軸の制約はありませんでした。当然ですが、時間軸の設定がない計画や目標は形骸化するリスクが否めません。
きっと、そういった批判もあったのでしょう。1月末に東証は暫定期間を明確に区切り、その期間内にプライム市場の上場基準を達成できなければ、上場廃止になることを暫定プライム企業へ通達しました。
また、同時に経過措置の終了期限が「後出しじゃんけん」になったこともあり、2023年9月末までに申請すれば、スタンダード市場への移行を可能とする、救済措置も暫定プライム企業には提示されることとなったのです。
暫定プライム企業はスタンダード上場企業となるか、上場廃止のリスクを甘受したうえで、基準達成に向けて、企業努力を続けるかの選択を迫られることになりました。救済措置とはいえ、「やってみたが結果的にダメだったのでスタンダード市場に移行する」という良いとこ取りは認めないということであり、それだけ東証は厳しいスタンスを示したということになります。
暫定プライム企業のプレッシャー、企業努力を優先か
暫定プライム企業にとって、これが強烈なプレッシャーになることは想像に難くありません。割り切って、スタンダード市場を選択するか、プライム市場に引続きチャレンジするかを決める猶予期間は、少なくともあと半年程度しかないためです。
プライム上場というステイタスは維持したいものの、失敗すると上場廃止となって資金調達力や信用力低下が強いられるというリスクも考えなければなりませんが、どう折り合いをつけるか、期限を区切られてしまったのです。
現実的には、暫定プライム企業はその重要な経営判断を下すために、これから数ヶ月間のうちに一層の対応を進め、選択期限ギリギリの時点で、プライム基準にどこまで肉薄できたかを見極めて、最終判断をしたいと考えることでしょう。
中には、早々にプライム市場残留を諦めるケースもあるでしょう。しかし、株主の監視の下、経営計画まで提出した企業が、自助努力を早々に放棄することには相応の抵抗があるはずです。そのため、多くはギリギリまで努力を続けるのではと予想します。
暫定プライム銘柄への投資戦略、その見通しと注意点
とはいえ、残り半年程度で何かしらの成果を出すのは容易ではありません。そもそも、これまでも企業努力をしていたものの、基準を満たしていないのです。引続き、粛々と構造改革を進め、それに見合った業績改善を進めていたとしても、それを市場が秋までに評価してくれるかどうかは別問題でもあるのです。
暫定プライム企業としても、「成果を出せば黙っていても評価してもらえるはず」などと、悠長に構えていることは最早できません。本質的な企業価値拡大への取り組みは当然として、加えて市場に即効的に訴求できる施策を打ち出していく必要に迫られることでしょう。
特にプライム市場上場基準到達まで、かなりの背伸びをしなければならない企業は、より踏み込んだ施策を模索するものと考えます。見極めは必要ですが、暫定プライム企業のそういった施策への期待は、今後高まってくると予想します。実際、暫定プライム企業が(ファンダメンタルズの改革以外に)短期間で実行できる打ち手はかなり限られます。
まずは、IR発信の充実、メディアへの経営陣の露出といった認知度向上策です。これらで株式市場が反応してくれるのかどうかは不透明ながら、明らかにそういった動きに出てきた企業はそれだけ危機感を有し、積極的に対応していこうとする姿勢にあると位置付けることができるでしょう。
さらに、財務的な余裕や流動株式数に懸念のない企業では、増配や自社株買いといった株主還元の強化も進める可能性があるはずです。短期勝負と割り切れば、こういった動きに注目した投資戦略も、また一手と位置付けられるのではないでしょうか。
ただし、それでも最終的にスタンダード市場へ上場となれば、それは(プライム企業を対象とした種々のインデックスから外れることになるため)短期的な株価の売り材料になることは認識しておく必要があります。ややトリッキーな投資アプローチであることは確かなのです。このアプローチに深追いは禁物ともご理解ください。