先週は11月以降の米ドル急落が一服

先週の米ドル/円は、11月以降広がった米ドル急落が一息つき、一時は137円台後半まで米ドル反発となりました(図表1参照)。今週は、米11月CPI(消費者物価指数)発表やFOMC(米連邦公開市場委員会)など注目イベントが目白押しですが、その中で米ドル下落が再燃する可能性はあるのか、それともすでに12月2日に記録した133円台で米ドル下落は一段落したのかについて、今回は考えてみたいと思います。

【図表1】米ドル/円の日足チャート (2022年9月~)
出所:マネックストレーダーFX

11月以降の米ドル急落の特徴の1つは、米金利とのかい離でした。米金利も低下はしましたが、あくまで小幅にとどまる中、米ドルはそんな米金利低下では説明できないほどの急落となったのでした(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と米2年債利回り(2022年3月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

このような米金利で説明できない米ドル急落は、年末特有のポジション調整の影響が大きかったのではないかと私は考えました。越年前には、利益確定や損切りなどによるポジション調整が入りやすい傾向があります。今回の場合は、10月まで歴史的な米ドル高・円安が展開してきたため、米ドル買い・円売りポジションに大きく傾斜していた可能性があり、ポジション調整は米ドル売り・円買いが基本になったでしょう。

11月以降の米ドル急落、2つのハイライト

11月10日の米10月CPI発表後と11月30日のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長発言後に、米ドルは急落しました。この2回に共通したのは、米ドルの保合い下放れが起こったということでした。CPI発表前、そしてパウエル発言前は、ともに2~3週間、米ドル/円は4~5円程度の方向感を欠いた一進一退が続いていましたが、そのレンジを割り込んだことで米ドル下落が加速しました(図表1参照)。

相場は、小動きが続くとエネルギーが溜まるため、その小動きの終わり、別な言い方をすると保合い放れが起こると、溜まったエネルギーが発散されることで一転して一方向に大きく動く可能性が高まります。上述のように、ポジション調整で米ドル売りが入りやすいところに、保合いを米ドル下放れとなったことから、米金利では説明できないほどの米ドル急落が起こった、それが11月以降の米ドル急落の基本的な構図だったのではないでしょうか。

ポジション調整は年末までに一巡

ポジション調整は「年末特有」と説明してきたように、基本的には年末までに一巡します。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションを見ると、2022年と同様に2021年も11月以降米ドル買い・円売りの縮小が続きましたが、それはまさに年末で一巡し、2022年に入ると米ドル買い・円売り再開となっていました(図表3参照)。

【図表3】CFTC統計の投機筋の円ポジション (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上のことから、米ドル急落が先週一服となった背景には、11月以降の米ドル急落をもたらした大きな要因と思われるポジション調整の米ドル売りが峠を越えつつある影響と考えられるでしょう。対円だけでなく、非米ドル主要5通貨(日本円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、加ドル)で計算した米ドル・ポジションは、米ドル買い越しについては先週にかけて大きく縮小し、ほとんどニュートラルに近くなりました(図表4参照)。

【図表4】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

CPI発表やFOMCの注目イベントがあるが、米ドル下落は限定的か

今週は米CPI発表やFOMCといった注目イベントが相次ぐ予定となっています。しかし、上記で説明した通り、年末が近付く中で、ポジション調整に伴う米ドル売りが峠を越えつつあるなら、米ドル下落は限られ、12月2日に記録したこの間の米ドル安値である133円台を割り込む可能性は低いのではないでしょうか。

なお、13日発表予定の米11月CPIの対前年同月比上昇率は前回の7.7%から7.3%程度へ低下するとの予想になっています。ではこの結果に対して為替相場はどのような反応となるでしょうか。

9日に発表された米11月PPI(生産者物価指数)は、対前年同月比上昇率が前回の8%から7.4%へ比較的大きく低下しましたが、事前予想が7.1%程度へさらに大きく低下することを見込んでいたことから、むしろ発表直後は米ドル買いの反応となりました。その意味では、CPI発表後の反応は、事前予想の7.3%程度が基準になりそうです。

そして14日は年内最後のFOMC。ここでは利上げ幅がこれまでの0.75%から0.5%へ縮小すると見込まれています。為替相場の反応としては、パウエル議長の記者会見や、FOMCメンバーの今後のFFレートの見通しなどが材料視されることになりそうです。

11月以降の米ドル急落をもたらした大きな要因と思われるポジション調整の米ドル売りが峠を越えつつあるなら、CPIやFOMCを受けてもこの間の米ドル安値である133円台を割り込む可能性は基本的には低いのではないでしょうか。では逆に、米ドルが一段の反発に向かう可能性はあるのでしょうか。テクニカルには、11月30日のパウエル発言をきっかけに米ドル下放れが起こる前までの保合い下限、137円半ばを大きく超えられるかが目安になりそうです。

以上を踏まえると、今週の米ドル/円は133~138円のレンジで想定したいと思います。