中小型のグロース銘柄に見直し機運高まる

中小型のグロース銘柄への資金流入の兆しが強まっている。東証マザーズ指数はテクニカル的なフシ目であった8月17日の戻り高値765ポイントを上回り、4月以来となる800ポイントを回復してきた。

投資家の1ヶ月強の買いコストを示す25日移動平均線や3ヶ月強を表す75日移動平均線は既に上向きになり、11ヶ月のコストを示す200日移動平均線も上向きになりつつある。

図表1の通り、「株価」、「短期線(25日移動平均線)」、「中期線(75日移動平均線)」、「長期線(200日移動平均線)」の順に並ぶ状態を「パーフェクト・オーダー」といい、トレンドが強い状況を表す。

【図表1】東証マザーズ指数 週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2022年11月28日時点)

また、図表2の通り、週間足でも1年間の売買コストを示す52週移動平均線を上回ってきている。既に13週移動平均線、26週移動平均線は上向いてきている。52週移動平均線を上回るのは月末ベースとしては2021年7月以来のこととなる。52週移動平均線が上向けば、さらに強固な強気シグナルとなる。

【図表2】東証マザーズ指数 週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2022年11月28日時点)

東証マザーズ指数は、2020年10月の高値1,368ポイントから2022年6月の607ポイントまで1年8ヶ月で56%もの下落となったが、米金利の低下による高成長株の見直しや、東証プライム市場の落ち着きで見直し機運が高まりつつある。

直近のIPO(新規公開)銘柄で、時価総額の大きい銘柄の人気も後押し要因となっているようだ。需給面でも変化がある。下落過程では、ほぼ一貫して売り越してきた外国人投資家は、マザーズ先物とグロース市場の現物合計で11月2週125億円の買い越し、3週も105億円の買い越し(市場関係者調べ)となっている。米国でハイテク株が見直されているのと歩調を合わせている感もある。

東証マザーズ指数にニーズが集まる理由

ところで、新興・成長株市場は「グロース」市場に変更されたのに、未だに東証マザーズ指数で解説していることに違和感がある方もいるのではないだろうか。

4月から東京証券取引所の市場再編があり、それまでの「市場第1部」、「市場第2部」、「ジャスダック」、「マザーズ」が、「プライム」、「スタンダード」、「グロース」となった。

新興市場は、それまでのジャスダック銘柄の第1部とマザーズ市場を統合し、東証グロース市場としてスタートしている。東京証券取引所は再編に合わせて、東証マザーズ指数の算出を当初取りやめると発表していた。しかし、継続を決めたのは「要望が多かった」からだ。

最大の理由は東証マザーズ指数には「先物取引」があることだ。先物と現物指数の価格差に着目する「裁定取引」や、現物株の値動きをヘッジ(保険つなぎ)するニーズがあることが需要の多い理由となっている。

東証マザーズ指数、今後の変更点とは

ただ、その東証マザーズ指数は2023年10月に役割を終える見通しにある。2022年4月4日に新市場区分に移行するとともに、東証マザーズ指数についても変更点があった。

グロース市場の新規上場銘柄が指数に採用され、上場市場変更銘柄やTOPIX(東証株価指数)構成銘柄は指数から除外される。これは当然の措置とも言えるが、この他に2022年10月から時価総額の大きい250銘柄が構成銘柄となっている。それまでは全銘柄の加重平均で算出されていた。

250銘柄以外は特例として10月末からウエイトが低減され、2023年1月末、4月末の3段階で除外される。東証では2023年10月最終営業日に東証マザーズ指数から「東証グロース市場250指数(仮称)」への指数名の変更を予定している。先物も新指数へ移行される見通しだ。

なお、東証グロース市場全体の値動きを示す、東証グロース株指数は2022年4月4日から算出開始されている。現状は、直後に付けた4月5日の高値1060.36ポイントに接近しつつある。

しかし、一方では東証マザーズ指数の先行きには懸念要因もある。12月の上場ラッシュによる需給の悪化や欧米で景気が失速した場合の影響だ。中小型株は景気の影響を受けやすい。2020年1月以降の指数急落でも示されている。そのため、銘柄の選別が重要となりそうだ。