5年MAを割れてきた米ドルの「総合力」実質実効相場
実質実効相場とは総合力を示す指標である。米ドルの実質実効相場は米ドルの総合力を示す指標であり、それは過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を2月に下回った(図表1参照)。これは、2020年のいわゆる「コロナ・ショック」を受けて米ドル/円が100円割れ寸前まで急落した局面以来のことである。
それでもこの2020年は、米ドル実質実効相場が5年MAを下回ったのは数ヶ月という一時的な動きだった。これに対して、米ドル実質実効相場が5年MAを継続的に大きく下回ったのは2003年にかけて見られた動きだった。それは米ドルの長期トレンドが上昇から下落、別の言い方をすると長期の米ドル高から米ドル安へのトレンド転換の中で起こった動きだった。
「歴史的円安」が分かりにくくするトランプ政権下の米ドル安拡大
その意味では、米ドルの実質実効相場がこのまま5年MAを大きく割れる動きに向かうか、それともあくまで5年MA割れは一時的に過ぎないということになるかは、米ドルの長期トレンドを考える上でもかなり重要な意味を持つことになる可能性がある。
それにしても、米ドルの総合力を示す実質実効相場で見ると、長期米ドル高トレンドの転換が試される状況が続いているということは、米ドル/円の動きからすると分かりにくいのではないか。米ドル/円は一時160円を超える米ドル高・円安となるなど、むしろ「歴史的米ドル高・円安」が続いてきたためだ(図表2参照)。
背景にあるトランプ不信の「米ドル離れ」
実は第1次トランプ政権が発足した2017年1月以降も、米ドルの実質実効相場は下落が続いたものの、5年MA割れを回避すると上昇トレンドに戻る動きとなった。第2次トランプ政権での米ドル実質実効相場の下落も、第1次政権のケースと同じように5年MAを大きく割れない程度にとどまるか、それとも今度こそ5年MAを大きく下回り長期トレンドの米ドル安への転換が確認されることになるか。
2月末の米国等によるイラン攻撃を受けてエネルギー供給リスクに対して強い「世界一の産油国」米国の通貨である、米ドル買いが強まった。こうしたことから米ドル実質実効相場の下落も3月は一服したと見られる。ただトランプ米大統領の国際秩序を無視した動きから、対米不信の高まりを受けた「米ドル離れ」も根強そうだ。長期の米ドル高トレンドの転換が試される状況はまだ続く可能性が高いのではないか。
