「1989」はテイラー・スイフトの大ヒットアルバムですが、彼女の誕生年からタイトルは付けられているようです。そして1989年は、あの天安門事件が起きた年でもあります。

中国は今、ゼロコロナ政策による過度の引き締めに対する不満から、国内の多くの場所で抗議のデモが起きています。中には公然と習近平は退陣しろとか、共産党も退場して民主主義を中国に、とか、中国では到底考えられないような反政府のスローガンをプラカードに書いたり、叫んだりするシーンもあるようです。

中国では起き得ないことのようではありますが、1989年4月から、同じように自由を求める学生を中心としたデモ、抗議運動が起きて、次第にそれは大規模なひとつのうねりになり、6月4日には遂に人民解放軍の戦車が国民に砲を向ける事態にまで至りました。そして今回の抗議デモの一部では、テイラー・スイフトの曲を歌ってデモを開始したりしているようです。天安門事件に対する想いがあるのでしょうか。

しかし、恐らく1989年のような展開にはならないのでしょう。中国の公安関係部門は、軍隊(人民解放軍)よりも大きな予算を持ち、国中に監視カメラを置き、ゼロコロナ政策の中でスマホを使って移動や入店などを全て監視・制御できるような仕組みを構築し、警察もまた、1989年時にはなかった、数千億円規模の対暴動道具を揃えていると云われています。戦車の砲を向けなくても、暴動を抑えることは出来るようになっているのです。

更にしかし、ワールドカップの試合が中国国内でも放映されて、世界の人たちがマスクもせず、席の間隔も空けず、楽しそうに応援している様子を見て、厳しく行動が制限される自分たちと比べて、そのあまりに大きな差に驚愕し、政府に対する不満を爆発させたとも云われています。もちろん今は既に、ワールドカップの放映も、観客席は一切そのまま見せないようにしているとのことですが、こう云った幅の広い、全国的な不満や不信が募ってくると、流石の習近平政権も何かしらの譲歩をしなければならなくなるかも知れません。

但しゼロコロナ政策は習近平自らが推進してきたこと。中々都合のいい軌道修正は難しいかも知れません。そして中国経済の悪化が、これら全ての動きに暗い影を落とし、反感のエネルギーを増幅するでしょう。急に起きてきたこの中国の情勢。目が離せませんね。