長期でじっくり保有する「コア」資産と、短期~中期投資でリターンを狙う「サテライト」資産、そこに将来のコア銘柄になることが期待される銘柄を“青田買い”する「第2のコア」を加えた「ダブルコア+サテライト戦略」を実践する投資熊(クマ)さん。これまでの過程には学費ローンの返済、投資での失敗、徹底的に自己と向き合う経験がありました。クマさんに最新の投資戦略、銘柄選びのポイント、注目しているセクターなどをうかがいました。

●投資熊(クマ)さんプロフィール●
29歳、出身はどこかの田舎の森。エサ代を稼ぐために上京し、大手企業でマーケティング営業として働く。趣味は映画鑑賞や車、ゲーム、読書。好奇心旺盛な性格で、甘いものやお酒、お肉、家系ラーメン、はちみつが好物。主に日本株は配当を目的とした長期保有、米国株はインデックスを中心とした投資を実践中。

少しでもお金の制約から解放されたい

――クマさんはいつ頃から投資に興味を持たれたのですか。

投資を始めたのは社会人になってからですが、高校生のときから興味を持っていました。ごく普通の裕福ではない家庭で育ったので、大学行くにしてもお金を借りないといけないし、車や家を買うにしても、ローンを組む必要がある。実際に、大学の学費も自分で払い(生活費の仕送りはしてもらっていましたが)、今もローンの返済を続けています。生きていく上で、お金の制約から逃れることはできません。そういった制約から少しでも解放されたい、苦労しながら働いている家族を少しでも楽にしてあげたいという思いが強く、使えるお金を増やしたいという思いで投資を始めました。

――どのくらいの資金で投資を始められたのでしょうか?

10万円~20万円程度だったと思います。2016年6月に投資を始めた当初は日産(7201)やベリテ(9904)など、自分が知っている企業で配当利回りが高い銘柄を買いました。当時は日本株を1株から買えることを知らなかったので、1単元(証券取引所で取引される基準となる株式数。株主総会では1単元から議決権行使が認められる)で買っていたので、それくらいの資金だったかと思います。

失敗を糧に徹底的に自己分析

――その後、暗号資産に投資されたそうですね。

はい。2017年9月に暗号資産のビットコインに投資しました。ビットコインへの投資では少し利益を得ましたが、当時ビットコインの値動きがあまり変動しなかったので、数日ですべて売却して、ボラティリティの高かったモナコインに投資しました。当時は「とにかく早く儲けたい!」という気持ちが強かったんですね。その後、モナコインに投資した約2ヶ月後の2017年12月にモナコインが暴騰しましたが、すぐ暴落。利益確定するタイミングを逃した&狼狽トレードで、結局99.7%の損失となりました…。

――次にFXに参入されたそうですが、成果はいかがでしたか?

2020年1月にはFX(外国為替証拠金取引)を始めてみましたが、あまり勉強せずに始めたこともあって、コツコツ勝ってドカンと負ける感じでした。強制ロスカットが3回続き、これだといけないと思って一旦辞めました。

――失敗から学んだ教訓があれば教えてください。

これらの失敗から「リターンとリスクは表裏一体」であることを学びました。大きなリターンを得ようとすると、その分リスクも大きくなります。

例えば暗号資産では、短期間に大きなリターンを得ようとしてマイナーなコインに投資したことが失敗の原因だったと感じています。FXでは、取引する数量を多くしたり、レバレッジを高くし過ぎたりすると、自分が予想した方向とは反対の方向に大きく動いた場合に取り返しがつかなくなる…。そういったことを学びました。

――その後どのように投資を再開されたのですか。

一般的に、投資を始めるときにはまず銘柄を選ぶと思いますが、私は最初に徹底的に自己分析をしました。投資を通じて何を実現したいのか、そのためにはどれくらいの期間でどれくらいのリターンが必要か、自分の好き嫌いは何で、それに合った投資スタイルがどのようなものか、どれぐらいのリスクなら受容できるのか…。これまでの失敗経験を踏まえて、これからは堅実な投資スタイルにシフトしようと決意しました。

――自己分析の方法は何か書籍などを参考にされたのでしょうか。

いいえ、完全に自己流です。2020年のゴールデンウィークに新型コロナウイルス感染拡大で緊急事態宣言が出ていて、実家の森へ帰ることもできず、10日間ほど家から一歩も出ずに自分と向き合ったんですね。そこでじっくりと考えを深めたことで、新たな一歩を踏み出すことができました。

――2020年5月に投資を再開し、翌6月には投資対象を日本株から米国株に広げたそうですね。その理由を教えてください。

米国株は日本株より伸びやすいと考えたからです。過去の値動きを見ると、NYダウは過去136年、S&P500は過去96年、ナスダック100指数は過去36年、右肩上がりの傾向にあります。もちろん、過去は未来を保証しないので、今後もこの傾向が続くかはどうかはわかりません。例えば、これまで成長を続けてきた銘柄であっても、今後も成長を続けるとは限りません。今後も伸びるのであれば、その理由を探る必要があります。

米国についていえば、世界最大の経済大国で世界の優秀な人材が集まっていますし、人口も増加しています。今後も伸びるポテンシャルは十分にあると考えています。

――現在の投資戦略を教えていただけますか。

実は、2022年9月から投資戦略を少し変更しました。「ダブルコア+サテライト戦略」と名付けています。これは、長期で保有する「コア(資産)」と、短期~中期で保有する「サテライト(資産)」、そして今後の増配率が高そうな銘柄や連続増配を続けてくれそうな銘柄、配当も株価上昇も期待できる銘柄、テンバガー候補銘柄からなる「第2のコア」からなるポートフォリオを構築する戦略です。

このうち「コア」では、世界の株式市場に分散投資する米国株ETFの「VT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF、ベンチマークはFTSE グローバル・オールキャップ・インデックス)」と、安定配当や連続増配が期待できる日本株の個別銘柄に投資しています。比較的堅実な銘柄なので、いかに投資する資金を増やすかがポイントだと考えています。

「サテライト」では、米国のテーマ系ETFのほか、旬な銘柄やETF、レバレッジETFに加え、CFDで短期トレードも行っています。このうちCFDについては、しっかり勝てそうな場面で短期トレードし、素早く少額を稼ぐ戦略をとっています。

コアに関してはそれなりに成果が出てきましたし、サテライトは成功も失敗もありますが、コア+サテライトでインデックスを上回るリターンを上げていれば問題はないと考えています。それで「第3の柱」として、2022年9月から長期保有できる銘柄を“青田買い”する「第2のコア」を構築することにしました。ここに入るのは将来「コア」になり得る銘柄で、少額から買い始めて徐々に育てていくつもりです。

投資熊さんの投資戦略
● コア(長期):VT+優良日本株(高配当→安定配当・連続増配中心へ)
● サテライト(短期~中期):米国のテーマ系ETF、旬な銘柄やETF、レバレッジETF、CFDで短期トレード
● 第二のコア:増配率が高い銘柄、今後の増配率が高そうな銘柄、今後連続増配を続けそうな銘柄、配当も株価も両方取れそうな銘柄、テンバガー候補(低位株やSNSなどで話題の急騰株には触らない)

「リターンとリスクは表裏一体」急騰株には触らない

――クマさんが個別銘柄を選ぶうえで重視しているポイントを教えてください。

選ぶポイントは銘柄(銘柄の性質)によっても異なりますが、これまでの経験から「リターンとリスクは表裏一体」であることを学んだので、基本的にSNSなどで話題になっている急騰株には触らないようにしています。そういう銘柄はとにかく値動きがすごいので。また、なぜその銘柄を選んだのか、自分にとってその銘柄はどのような銘柄なのかをきっちり説明できるようにすることも大切ですね。

そのためには具体的なシナリオを持っておかなければなりません。例えば、どのくらいの保有期間を想定しているのか(長期投資か短期投資か)、キャピタルゲイン狙いか配当狙いか、それとも他の意図があるのか、過去の値動きはどうか(どこまで上がり、どこまで下がったのか)、今後の値動きによる対応策(どこまで上がった・下がったら売るのか、買い増すのか)などを考えておきます。また、金融政策や不況の時に、その銘柄の本質的な価値が揺らぐことがないかもチェックポイントです。

――日本株と米国株はどれぐらいの割合で保有されていますか。

現状は「日本株6割、米国株4割」ですが、米国株の方が伸びやすいと考えているので、一旦は「日本株5割、米国株5割」にしていこうと考えています。

――米国株はどのような銘柄に投資されているのでしょうか?

コア枠としてVTに投資しているほか、ETFでは「DGRW(ウィズダムツリー米国株クオリティ配当成長ファンド、ベンチマークはウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長インデックス)」、「QYLD(グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF、ベンチマークは CBOE NASDAQ-100・バイライト・V2・インデックス)」、「TMV(Direxion デイリー 20年超米国債 ベア3倍 ETF、ベンチマークはNYSE 20年プラス国債指数)」など、個別銘柄ではアルトリア・グループ(MO)に投資しています。ETFのうちTMVは利益確定する予定です。また、MOは、高配当銘柄で、かつ連続増配と続けているところに惹かれて買いましたが、米国株はすべてETFにする予定なので、いずれ利益確定する予定です。

――米国株はETFをメインに投資されている理由は?

米国株には魅力的な銘柄が多いので、あれもこれも欲しくなってしまいます。なので、それならパッケージみたいになっているETFの方がいいかなと。米国にはP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)(PG)やJ&J(ジョンソン・エンド・ジョンソン)(JNJ)、コカ・コーラ(KO)、ペプシコ(PEP)など連続増配している企業がたくさんあって、どれも魅力的ですね。

>> >>【後編】20代会社員が実践「配当額を増やす」投資手法

※本インタビューは2022年11月4日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。