米ドル買いポジション手仕舞いが急拡大
注目された11月10日発表の米10月CPI(消費者物価指数)が、前年比8%上昇といった事前予想を大きく下回る7.7%の上昇にとどまると、米金利が大きく低下。それに連れて米ドル/円も急落となった。これにより、10月21日に記録した151.9円で、歴史的に展開してきた今回の米ドル高・円安もついに終わったのだろうか。
米ドル/円は、10月21日に151.9円まで急騰した後、日本の通貨当局による米ドル売り介入などをきっかけに急反落となると、その後は米金利上昇への反応も鈍くなり、米ドルの上値が重い展開が続いていた(図表1参照)。
ところで、スケールにはかなりの差があるが、実は1年前にも米ドル高・円安は10月にかけて急ピッチで進んだものの、11月に入ると一段落となった。ちなみに、2021年の場合、10月までの米ドル高値は10月20日に記録したものだった(図表2参照)。これに対して、2022年の場合、上述のようにこれまでの米ドル高値は10月21日に記録したものだ。
特に個人投資家の場合は、税金の申告との関係で年末までに取引を手仕舞うケースが多いため、年内の米ドル高値見極めへの意識は強いだろう。すでに、年内の米ドル高・円安がピークを打った可能性がありそうだと判断すれば、米ドル買いポジションの手仕舞いが拡大する。この結果、11月に入り、米ドル高の動きが鈍くなると、米ドル売りの拡大により、さらに米ドル高は進みにくくなるということではないか。
ただ、2021年の場合は、11月半ばにパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の再任が決定し、そのパウエル議長が11月末にそれまでの「インフレは一時的」といった見解を撤回。タカ派姿勢を強めたことなどをきっかけに、「米金利上昇=米ドル買い」が再燃するところとなった。
これに対して今回は、冒頭に述べたように米10月CPIの前年比上昇率が予想を比較的大きく下回ったことで米金利が大きく低下したことから、米ドル買いポジションの手仕舞い、損切りが拡大。その結果、米ドル一段安になったと考えられる。
米ドル/円が150円を超える中で、5年MA(移動平均線)かい離率はプラス30%以上に拡大し、経験的には米ドル高・円安はさすがにいつ終わってもおかしくない段階を迎えていた(図表3参照)。そうしたことも、今回のCPIの結果を受けた米金利低下の中で、米ドル買いポジションの手仕舞いが急拡大した背景と考えられる。