ポジション調整は一因の可能性

一時150円を突破した米ドル高・円安は、約40年ぶりのインフレを受けた米大幅利上げに伴う米金利上昇への連動が基本だった。ただ、11月2日のFOMC(米連邦公開市場委員会)以降、米金利上昇に対する米ドル高の反応が鈍く、米金利と米ドルのかい離が目立ってきた(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円と米2年債利回り (2022年3月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

これはあくまで、11月10日予定の米10月CPI(消費者物価指数)発表といった注目イベントを控える中での一時的な動きに過ぎないのか。それとも、両者の関係に変化が出てきたのかは気になるところだ。

考えられる一因は、ポジション調整の影響だ。例年、11月からは年末を控えポジション調整が拡大する傾向がある。ヘッジファンドの取引を反映するとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、10月末にかけて売り越しが10万枚を突破するなど、米ドル買い・円売りへのポジションの偏りが懸念されていた(図表2参照)。そんなポジションの手仕舞いが、米ドルの上値を抑制している可能性はあるだろう。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジション (2020年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

2022年に入り、米ドル高・円安は一気に38円以上も広がった。これだけ記録的なペースで米ドル高・円安が展開する中では、上述のCFTC統計の投機筋のポジションが示す以上に、実際には米ドル買い・円売りのポジションが膨大に積み上がっている可能性はあるだろう。そうしたポジションを手仕舞う動きが、年末が近付く中で広がることで、米金利上昇のわりに、米ドルの上値を重くする可能性は考えられなくない。

米ドル/円は10月にかけて9週連続で米ドル陽線となった後、先週にかけて3週連続の米ドル陰線となった(図表3参照)。3月から記録的ペースで米ドル高・円安が展開した中で、それと逆行する米ドル陰線は3週続いたのが最長だ。そうした流れが変わらず、あくまで一時的な米ドル安・円高に過ぎないなら、そろそろ終わりに近いだろう。

【図表3】米ドル/円の週足チャート (2022年1月~)
出所:マネックストレーダーFX

そうではなく、今週も米ドル陰線となり、米ドル陰線が4週続くようならば、米ドル高・円安の流れが変調を始めている可能性が高まりそうだ。その意味では、今週、米ドル陽線となるか、それとも陰線となるかは、今後の行方を考える上で重要な意味になる可能性があるだろう。