FFレート見通しは2023年6月に5.25%へ上方修正
2日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けて、金融政策を反映する米2年債利回りはこの間の高値を更新、一時4.7%程度まで上昇しました(図表1参照)。これは、FOMCの結果やパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見などから、米利上げ見通しが上方修正されたことに反応した結果と言えるでしょう。
金利市場では、今回のFOMCの後から、米国の政策金利であるFFレートは2023年6月に5.25%程度まで引き上げられるといった見通しになりました(図表2参照)。前回、9月FOMC当時には、FFレートの最終到達点、「ターミナルレート」は4%程度との見方だったことを考えると、この数ヶ月で米利上げ見通しが急拡大したことがわかります。
米2年債利回りは、基本的にFFレートの見通しを参考に動くので、その意味では2023年6月にかけて5%を超えて一段と上昇する可能性が出てきたわけです。米ドル/円はこの間、その米2年債利回りと高い相関関係が続いてきました(図表3参照)。この関係がこの先も続くなら、これまで見てきた米利上げ見通しの上方修正を受けて、米ドル/円もこの間の米ドル高値を更新、その上で155円を超える可能性も出てきたということになるでしょう。
米金利が一段の上昇なら介入戦略も変化か
こうした中で、先週の米ドル/円は週初こそ149円近くまで上昇再燃となりましたが、FOMCの後も米ドル上値は重く、注目された4日金曜日の米10月雇用統計発表後は、146円台へ米ドル反落となりました。その意味では、これまで見てきたFOMCを受けた米利上げ見通しの上方修正、それに伴う米金利上昇への米ドル/円の反応は意外に鈍かった印象です。
その主因は、一気に150円突破まで米ドル高・円安となったことに伴う、いわば「疲労感」であるとも言えるのではないでしょうか。米ドル/円は8月の130円から一気に150円を突破するまで9週連続の米ドル陽線となりました。3~5月にかけても、9週連続の米ドル陽線となった後は3週連続の米ドル陰線となりましたが、一本調子で大幅な米ドル高が進んだ後は、ある程度のスピード調整が必要なのだと思われます(図表4参照)。
一方で、そうした観点で見ても、先週まで3週連続で米ドル陰線となったことから、スピード調整はそろそろ終わりに近い可能性が考えられます。そもそも、今回のFOMCで4%まで引き上げられたFFレートは、次回12月会合で4.5%以上引き上げられるのはほぼ確実と見られており、その意味ではFFレートを参考に動く米2年債利回りも、すでに4.5%を大きく下回るまで低下する可能性は低いでしょう。それをこれまでの米ドル/円との関係に当てはめると、150円を下回った水準は米ドルの「下がり過ぎ」の可能性すらありそうです。
以上のことから、今週は米ドル高のスピード調整が終わり、米ドル高・円安再燃を探る展開になる可能性があります。その場合、最大の注目材料となるのは、やはり10日予定の米10月CPI(消費者物価指数)発表でしょう。FOMCが利上げ見通しの上方修正を続けているのは、言うまでもなく約40年ぶりのインフレの是正が、いまだ目立った進捗となっていないからですが、今回のCPIも今のところの予想は前年比8%といった具合になお高い物価上昇が見込まれています。
ところで、今後米ドル高・円安再燃となった場合、日本の通貨当局による円安阻止介入との攻防が改めて注目される可能性はあるでしょう。米ドル高・円安が150円の大台を突破し、一気に152円に迫る動きとなったところで、10月21日、日本の通貨当局による米ドル売り・円買い介入が行われたと見られています。これにより、怒涛の米ドル高・円安もこれまでのところ一段落した形となっています。
ただ米ドル高・円安の一段落には、この当時、米利上げ幅縮小観測などを受けて米金利が低下に転じた影響も大きかったと思われます。その意味では、今回のFOMCを受けて米金利が一段と上昇する見通しとなったことは、日本の通貨当局の介入戦略にも変化をもたらすかもしれません。
米ドル/円が米金利と連動する中においては、米金利上昇に連れた米ドル高・円安を介入で止めることは難しいでしょう。この先、米金利上昇に連れて米ドル/円が150円を超えてきても、状況次第で、介入の米ドル売り水準をこれまでより米ドル高・円安方向へ修正する可能性も考えられるのではないでしょうか。
以上を踏まえ、今週の米ドル/円は145~150円中心の展開を予想したいと思います。