統計によると投資信託が買われる(売られる)タイミングは資産価格が上昇(下落)している時に見られがちです。

上昇時には追随したくなり、下落時には心理的なストレスから売却に動く、結果として高値買い・安値売りにつながっているのかもしれませんが、投資家は必ずしも合理的な行動をとることができるとは限らず、運用には心理的な揺さぶりが大きく影響すると言われます。

経済学のモデルに心理学的に観察された事実を取り入れていく行動経済学という学問では、損失を回避したくなる、目先のトレンドに左右されがち、など時に感情的で非合理的な行動をする投資家の意思決定や行動が説明されており、ドキッとするポイントが満載です。

米国ダルバー社の調査によると平均的な株式ファンド投資家の過去30年のリターンは3.7%とS&P500株価指数の10.4%を大きく下回っています。この差が生じる要因として一番大きいのはタイミングを誤った非合理的な投資行動によるものとされています。

では失敗を回避するにはどうしたらよいでしょうか?対面型のプライベートバンキング事業においては個々人のライフプランに合った運用計画を策定し、規律を守ることで感情に左右される投資を避けるアドバイスがなされます。また分散投資によって全体のリターンの振れを安定化することも大切です。

分散投資においてはポートフォリオに占める債券等保守的資産の割合について、20歳であれば20%、80歳であれば80%と年齢が簡易的な目安にされます。若い頃は時間を味方に運用リスクを取り、年齢と共に徐々にリスクを抑制していくことになりますが、寿命が延びていることで株等リスク資産の割合は目安より多めで良いでしょうし、リスク選好や資金計画によってもこの割合は柔軟に変更されるべきです。

株式・債券等伝統資産に加えて、異なる動きが期待されるオルタナティブ運用も存在感を増してきている中で、全体の2割程度はそのような資産への投資が好ましいでしょう。

また、これまでの中長期的な株式市場の推移を前提にすると、少しでも上昇する日を逃すと最終的な成績に大きく響くことになるため、過度なリバランスは避けるべきです。短期的な相場の振れは中長期目線ではノイズになりがちです。感情的にならないよう論理的・計画的な中期目線での運用スタイルが堅持されるべきでしょう。

他にも時間分散によって粛々と資産を積み上げていくという考え方も感情的な投資を避ける手段として有効です。特に若年層であれば短期的に振れを伴うリスク資産であっても、長期目線で成長を享受できます。

ウォーレン・バフェット氏も感情をコントロールする重要性を語っていますが、中長期的な資産運用においては感情的な投資判断を避け、規律ある投資を維持することが重要です。