中国経済の鈍化や世界的な景気後退が下落要因に
2022年9月下旬の中国本土市場・香港市場は下落となっています。2022年9月21日終値から9月30日終値までの騰落率は、上海総合指数が-3.0%、香港ハンセン指数は-6.6%となり、特に香港ハンセン指数が大きく下げています。
上海総合指数は上値抵抗線となっていた50日移動平均線が100日移動平均線を下に突き抜け、株価は大きく下がるようなことはないのですが、少しずつジリジリと下げる展開が続いています。
ちなみにロイター通信によると、関係筋の話として中国の規制当局が一部のファンドマネージャーや証券会社に対し、10月の共産党大会を前に株式の大量売却を控えるように指導したとの報道がありました。
それでも株価がジリジリと下がっている理由の1つは、中国本土市場が10月3日~7日の間、国慶節の連休で休場となることがあると思います。引き続き、政策期待は強いものの、新型コロナウイルスによるロックダウンの影響で中国経済がスローダウンしていること、米国の金融引き締めや欧州のエネルギー危機で世界経済が落ち込み気味なこと、新興市場からの資金流出懸念などから長期連休前に資金を引きあげる動きもあった様子です。
一方、香港ハンセン指数は中国本土株以上のペースで下落が続いており、約11年ぶりの安値水準となっています。
香港に上場する大手銀行のHSBCホールディングス(00005)の2022年9月21日終値から9月30日終値までの騰落率は13.0%安となっています。これは香港だけではなく、日本や欧米の銀行株も大幅安となっています。金利は上昇し、銀行としては貸出金利が上がることにつながる側面はあるのですが、それを上回る世界的な景気後退への懸念が株価を下げているのだと思います。
同様の理由で資源株も大きく下げている他、IT関連株も大きく下げ、香港のハイテク企業からなるハンセンテック指数の当該期間の騰落率は-7.7%となっています。なお、香港市場は10月4日が重陽節の祝日で休場となります。
中国共産党大会に注目、株価に影響が出るか
なお、当該期間に発表された中国の経済指標ですが、8月の工業利益(年初来/前年比)が-2.1%でした。
また、9月の中国国家製造業PMIが50.1(市場予想49.7、前月実績49.4)、中国国家非製造業PMIが50.6(市場予想52.4、前月実績52.6)、Caixin中国製造業PMIが48.1(市場予想49.5、前月実績49.5)と、どちらかと言えば予想を下回る内容となっており、特にCaixin中国製造業PMIが景況感の境目である50を下回っている点は気になるところです。いずれにしても中国経済は低調なままの状況が続いていると言えるでしょう。
今後の最大の注目イベントは10月16日に開幕予定の中国共産党大会です。中国共産党大会は5年に1度開催され、指導部人事の他、重要な政策課題が議論されます。25名の政治局委員と、さらにその中から7名の政治局常務委員が選出されます。
中でも今回は習近平氏がトップの座を続投することが確実視されています。これまで政治的に落ち着かなかったこともあり、経済対策やコロナ対策も十分に打ち出せなかった側面があると思います。習近平氏がトップの座を継続することが決まり、政治的な落ち着きが出来たところで今後どのような対策が打たれるかに注目したいところです。
特にゼロコロナ政策への見直しです。中国政府もこの冬の再流行を懸念しているところだと思います。例えば、香港上場の製薬会社である石薬集団(01093)が「SYS6006」というオミクロン対応型のコロナワクチンを開発している他、その他の中国の製薬企業もワクチンや内服薬の開発を急いでいるところです。ゼロコロナ政策への見直しがあれば、株価にも大きな転換点となる可能性があります。