お金に苦労した20代、夫婦ともに「貯蓄ゼロ」だった新婚時代を経て、出産を機に一念発起。家計を見直し、資産形成に取り組んだ結果、わずか6年で資産2000万円超を達成した、個人投資家のさぶさん。「心をすり減らさない投資」をモットーに、書籍やSNSを通じて自身の家計管理や投資術を公開し、投資ビギナーや同世代の女性たちの支持と共感を得ています。現在のスタイルにたどりつくまでの試行錯誤の日々から今後の投資目標まで、さぶさんの資産形成のポイントについてうかがいました。

●さぶさんプロフィール●
大学卒業後、大手証券会社に総合職として入社。営業ウーマンとして活躍後、IT企業に転職。その後、2児のワーキングマザーとして暮らしやライフハック、資産形成術を公開したインスタグラムが話題を呼び、フォロワー数約23万人の人気アカウントに。著書に『元証券ウーマンの一生使えるお金の話  貯金ゼロから「貯め体質」』、『元証券ウーマンの資産運用の話 お金が増える「ゆる投資」デビュー』(いずれもKADOKAWA)

お金で苦労した20代、一発逆転を目指したFXでは失敗も

――投資に興味を持つようになったきっかけを教えてください。

「投資」に興味を持った最初の記憶は、小学校5年生のとき。円高のニュースを見て、「今のタイミングで米ドルに替えておけばいいんじゃない?」と、ひらめいたのが原体験です。「今、ドルを買っておいて、円安になったときに売ったら儲かるよね?」と、母親に言ったらすごく驚かれました。その記憶が心に残っていたこともあり、大学卒業後は証券会社に入社しました。

――実際に投資を始めたのは、どういった経緯からでしょうか。

証券会社の総合職として入社しましたが、親の事業の借金返済をはじめ、自分の奨学金や妹の大学費用などを支払っていたら、まったく貯蓄できなくて。証券営業としての知識はあるのに、投資に回すお金がなくて、実践する機会に恵まれませんでした。

今の会社に転職してからは、「まとまった種銭がなくてもできる」という安易な考えから、FXを始めました。しかし、利益が100万円を超えそうなタイミングで政権交代のニュースが飛び込んできて、結局50万円の損失に。手痛い経験でしたが、このときに私にはデイトレード的な投資は合わないと感じました。

プライベートでは28歳のときに結婚。パートナーとなった夫は奨学金の返済があり、夫婦ともに貯蓄はゼロ。そんな状態でしたが、フルローンで住宅を購入しました。第一子を授かった30歳のときに「このままではダメだ!」と目が覚めて(笑)。家計の見直しと資産形成に本気で取り組むことを決意しました。

出産を機に家計を改善「貯まる仕組み」に着手

――貯蓄ゼロから2000万円超を達成した資産形成のコツを教えてください。

根本的な家計の改善と貯まる仕組みづくりを考えるようになったのは、産休・育休中でした。「貯め体質」に変わるためのファーストステップは、「固定費の削減」と「変動費の見える化」。まずは固定費の削減に取り組み、家計簿アプリなどを利用して変動費も洗い出し、貯蓄に手取り収入の15%を回せるようにしました。

会社の持株会や企業型DC、つみたてNISAなどを活用して、「自動的に貯まる」仕組みづくりにも取り組みました。その結果、貯蓄・投資を始めた3年後には、貯蓄比率を収入の40%にまで押し上げることができ、今もそれはキープしています。

とはいえ、投資を始めたころはまだ自分のスタンスも定まっておらず、失敗も。産休中は自由になる時間が比較的あったので、値動きの激しい中小型株にも短期で投資してみたんです。でも、日中ずっと「どうなるかな……」と張り付くスタイルはやはり私には合わなかった。損失こそありませんでしたが、今ではまったく中小型株には投資していません。

――中小型株は自分に合わないと実感されたのですね。現状ではどのような視点で個別銘柄を選ばれているのでしょうか?

証券営業時代に様々なお客様を見てきましたが、そこで実感したのは、頻繁に売買を繰り返すよりも、ゆったりと大きく資金を動かすタイプのお客様の方が利益を出していたということ。私が担当したお客様は堅実な方が多く、女性では優待銘柄を保有している方も少なくなかったんです。

優待がお得な大型株は値動きもそう激しくなく、個人投資家が下支えしている安心感もあります。そこで、「丸亀製麺」などを運営するトリドールホールディングス(3397)やオリックス(8591)など、身近な銘柄を少しずつ選び始めました。日中はハードに仕事や子育てをしているので、基本的に株式はある程度放置しておいても安心だと考えている優良大型株に投資すると決めています。

中期と長期で目標設定、老後資金の目標額は1億円

――現在の投資方針を教えてください。

中期と長期で目標を立て、それぞれの目的に合わせた金融商品を選んでいます。「中期」は、今後10年で必要となるであろう2人の子どもの教育資金。これは、一人につき1000万円、合計2000万円を目標に、学資保険や外貨建て終身保険のほか、債券、米ドル預金で運用しています。ドル預金は資産全体の5%程度でしょうか。円安が進んだ今となっては、もっとドル預金をしておけばよかったと少し後悔しましたが(笑)。

教育資金の投資先として債券を選んだのは、「子どものためのお金は少しでも減らしたくない」という思いから。とはいえ、現金のまま銀行に置いておくと、インフレ下では目減りしてしまうので、少しでも増やすという目的で、教育費の一部は利回りのいい社債に投資しています。

――中期は教育資金の位置づけということですが、長期は老後資金でしょうか?

はい、長期的に資産形成してきたい老後資金は、夫婦で2000万円が当初の目標でしたがクリアできそうなので、今後の目標は大きく1億円。目標を達成すべく「つみたてNISA」を活用したインデックス型投信の積み立てをはじめ、日本株と米国株の個別銘柄を中心に投資しています。「FIRE(経済的自立と早期退職)」にはあまり興味がないのですが、老後もお金に対する不安を抱えずに、心豊かに暮らせるような仕組みづくりをしていきたいと思っています。

心穏やかでいられる金融商品を選ぶ

――ご自身のリスク許容度については、どのようにお考えですか。

FXや中小型株の投資では、「値動きが気になって寝られない」ということも経験しました。完全に自分のリスク許容度を超えた投資だったと、今は反省しています。この失敗から「落ち着いて、大船に乗ったような気持ちで投資できること」が、自分には重要なポイントなのだと痛感しました。

リーマン・ショックの直後に社会人となり、日経平均が7000円だった時代を身をもって経験しているからか、慎重かつ堅実な投資が自分のスタイルだと思っています。株式投資する際は優良大型株を選び、その上で「20〜30%株価が下落しても大丈夫か」というところが一つの銘柄を選ぶ基準です。

――マーケット動向の確認の頻度はどの程度行っていますか?

フルタイムで働きながら2児の子育てをしていると、毎日値動きをチェックしたり、頻繁に売買したりということは現実的にできません。1ヶ月に1回、家計簿の見直しをするタイミングでチェックするくらいの「ほったらかし」のスタイルが私には合っていますね。

現在は、家計のスリム化が継続できていること、生活防衛費に充てられる現預金を確保できていること、債券やインデックス投信など個別銘柄と比較して値動きが激しくない金融商品をポートフォリオに組み込めているため、とても心穏やか。この1年の株式の値動きが気にならないくらいです。

>> >>【後編】「相場が下がればチャンス」が信条、何があってもやめない資産形成術への思いとは:30代元証券ウーマンさぶさん

※本インタビューは2022年8月19日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。