モトリーフール米国本社- 2022年8月14日 投稿記事より

主なポイント

・フェイト・セラピューティクスの新しい細胞療法プラットフォームは、初期の株主に大きな利益をもたらす可能性
・ベラサイトには短期的にも長期的にも成長ドライバーがある
・アダプティブ・バイオテクノロジーズは、長期ミッションを後回しにして短期的な利益機会に注力

多くのハイテク投資家と異なり、バイオテクノロジー業界に強気なキャシー・ウッド氏が選好する3銘柄

アーク・インベストメントでファンドを運用するキャシー・ウッド氏は、銘柄選択の名プレーヤーであり、高成長株のファンから強く支持されています。ウッド氏は自身が運用するファンドを、破壊的イノベーション、宇宙開発、次世代インターネット、暗号資産(仮想通貨)といった特定の市場分野ごとに分けています。

ウッド氏のファンドは、バイオテクノロジー業界を嫌気していないという点で、ハイテク関連ファンドの中でも異彩を放っています。実際に、アーク・インベストメントにはゲノム革命に焦点を当てたファンドがあります。以下では、ウッド氏が保有する銘柄の中から有望視される、フェイト・セラピューティクス(FATE)、ベラサイト(VCYT)、アダプティブ・バイオテクノロジーズ(ADPT)について紹介します。

フェイト・セラピューティクスは液性腫瘍の新しい細胞療法で注目されている

細胞療法は、多くの液性腫瘍に対する重要で新しい治療法であることが証明されています。しかし、いくつかの重要な問題が、この画期的な技術の成長を阻害しています。

第1に、現在のがん細胞療法では、患者が専門の病院に行ってT細胞を採取し、遺伝子を改変した上で体内に再移入する必要があります。第2に、この治療法ではしばしば、安全上の多くの懸念が伴います。第3に、初期に承認された細胞療法は高額の費用がかかります。そして第4に、この第1世代の細胞療法は、固形腫瘍の治療にはあまり有効ではありません。

こうしたさまざまな問題を解決しようと、複数の企業が次世代細胞療法の開発に取り組んでいます。フェイト・セラピューティクスはその中の1社で、ウッド氏の目に留まりました。アーク・インベストメントは2019年に初めてフェイト・セラピューティクスに投資し、その後も持分を大幅に増やしています。

同社の中核にある価値命題は、遺伝子改変を行ったiPS細胞(人工多能性幹細胞)治療プラットフォームにより、T細胞の代わりにナチュラルキラー(NK)細胞を使用することで、がん患者にいわゆる「オフ・ザ・シェルフ(既製品)」オプションを提供するというものです。こうした治療法は、理論的には従来の方法よりも利便性が高く、コストが低く、多様な悪性腫瘍(固形がんを含む)に適用可能になるはずです。フェイト・セラピューティクスはこの種の治療法のリーダーであり、同社のプラットフォームは現在、早期臨床試験の段階にあります。しかし、再発/難治性の悪性リンパ腫(中悪性度)を対象とした臨床試験については、まだ計画段階です。

個人投資家として、このハイテクがん治療企業に投資するべきでしょうか。フェイト・セラピューティクスのプラットフォームが成功すれば、株価は間違いなく高騰するでしょう。同社のターゲット市場は幅広く、将来的に数百億ドルの売上をもたらす可能性もあります。

一方で、フェイト・セラピューティクスはハイリスク・ハイリターンの典型とも言えます。同社がオフ・ザ・シェルフのがん細胞療法という謎を解く保証はありません。しかも、他にも多くの細胞療法企業が、同社と全く同じ問題に取り組んでいるのです。

ベラサイトは着実に成長を続けるニッチな診断企業として注目されている

将来性を考えると、診断企業のベラサイトは既にいくつかの製品を市場に投入しているため、臨床試験の段階にある一般的なバイオ企業と比べるとリスクは低いと言えます。事業も好調で、最近も通期の売上高ガイダンスを上方修正したばかりです。2022年の予想売上高は2億6,500万~2億7,500万ドルから2億7,200万~2億8,000万ドルに引き上げられ、前年比24~28%という安定した増収が見込まれます。

同社は、医療上の曖昧な意思決定ポイントをターゲットとする戦略で成功しています。例えば、「Decipher」という同社の前立腺遺伝子検査は、前立腺がんの手術後に、しばらく様子を見るか、あるいはすぐに集中的な治療を開始するかを判断するのに役立ちます。

また、同社の「Afirma」検査は、以前は不確定で判断ができなかった生体検査の結果から、甲状腺結節(しこり)のがんリスクについて階層化することができます。

こうしたターゲットを絞ったアプローチにより、ベラサイトは2018年以降、31%という年平均増収率を実現しています。株価は2021年2月の最高値から60%超下落していますが、2017年以降では市場をアウトパフォームしています。過去5年間にベラサイトの株価は221%上昇しており、S&P500指数の72%上昇と比べると3倍以上のリターンです。

同社の既存の製品はそれぞれの市場で成長余地があり、さらに開発中の製品も複数あります。中でも特筆すべきは、時価総額でわずか18億ドルの医療技術企業が、次は肺がんに取り組もうとしていることです。患者の肺に結節が見つかった場合(米国では年間に160万件の肺結節が見つかっています)、次のステップはCTスキャンによるモニタリング、生体検査、あるいは外科的処置などが考えられます。

ベラサイトは次のステップとして、時間や費用がかかり、結果的に不要だったとなる可能性のある侵襲的処置ではなく、鼻咽頭スワブだけで済む、患者にとってより簡単な検査方法の開発に取り組んでいます。同社の鼻咽頭スワブの「Percepta」はまだ開発段階ですが、将来的に年間10億ドルを上回るビジネスチャンスとなる可能性があります。

同社は新しい市場を構築してきた実績があり、入念に計算された戦略でこれまでに成功を収めています。「Percepta」など、将来的に提供される可能性のある製品も多数あることから、グロース志向の投資家にとってベラサイトは検討に値するかもしれません。

アダプティブ・バイオテクノロジーズは黒字化に向けた新規路線の展開で注目されている

バイオ企業に投資する上での危険性の1つは、素晴らしい科学に心を奪われ、利益に目が向かなくなってしまうことです。アダプティブ・バイオテクノロジーズはまだ利益を出していませんが、同社の事業は確実に形になりつつあります。

同社には現在、免疫医療と微小残存病変(MRD)という2つの主要部門があります。2022年第2四半期の売上高のうち、51%が免疫医療、49%がMRDでした。

MRDはがん診断における究極の目標です。がん専門医にとってばつが悪いことの1つは、患者に「完全寛解(CR)」したと伝えた後にがんが再発することです。がんが再発する理由は、患者の体内にがん細胞が残っていたのにCR検査で見落としたためです。MRDは、顕微鏡で見えないがんも含めて、すべてのがんを補足することを目指しています。

アダプティブ・バイオテクノロジーズは、米国のメディケア(高齢者等を対象とした公的医療保険)で承認された最初にして唯一のMRD検査を手掛ける企業です。つまり、同社にとってMRD検査は大きなヒット製品と言えます。MRDは、がんの状態をより具体的に、より正確に診断することができます。

免疫医療部門では、チャド・ロビンズCEOが「T-Detect」プログラムを推進しています。「T-Detect」の究極の目標は、この診断によって、がんだけでなく、新型コロナウイルスのようなさまざまな疾患を明らかにすることです。これは驚くべきことです。将来的に、医師が簡単な検査を行うだけで、患者の免疫システムが戦っている相手をすべて知ることができるようになるかもしれないのです。

この夢がすぐに実現することはないでしょう。米食品医薬品局(FDA)から適応症ごとに「T-Detect」の承認を得るには莫大な費用がかかるからです。その代わり、同社はこの検査についてより多くのデータを蓄積するまで、FDAへの承認申請を見合わせることにしました。

それよりも、アダプティブ・バイオテクノロジーズにとって目先の焦点は、大手製薬会社と提携することを優先させるでしょう。同社の売上高は前年比100%増のペースで成長しており、事業の利益率も高水準にあります。先日の四半期決算発表は、これまでと同じような好調が示されました。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。
元記事の筆者George Budwellは、記載されているどの銘柄もポジションを所有していません。Patrick Bafumaは、記載されているどの銘柄もポジションを所有していません。Taylor Carmichaelは、アダプティブ・バイオテクノロジーズの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はフェイト・セラピューティクスおよびベラサイトの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。