先週の中国株は調整続きの展開となり、上海総合指数は終値ベースで年初来の安値を割り込み、3年振りの安値をつけました。投資家は金融緩和や景気刺激策を期待しているものの、具体的な政策が発表されていないことが嫌気されています。
もっとも、以前お伝えした中国湖南省の省都・長沙が8292億元規模のインフラ整備・産業振興計画を発表しているように、広東省や重慶市、貴州省など地方政府は相次いで景気刺激策を発表しています。7月以降に発表された地方政府の投資計画を単純に合計すると7兆元もの巨額な計画になるのですが、市場は大量の資金をどうやって確保するのかと、実施には懐疑的な見方を持っているようです。
先週発表された中国の経済指標についてですが、株式市場にとってはあまり良くない発表が続きました。まず、HSBCが発表している中国製造業PMIの8月速報値が47.8と、7月の確報値の49.3から悪化し、過去9ヶ月で最低の水準に達しています。HSBC発表の中国製造業PMIの統計対象企業は公式発表よりも中小企業の比率が高いことから、中国の景気に一番敏感な企業の業績は悪化を続けていることがわかります。これは第3四半期に中国の景気は反転するとの期待を裏切るものとなりました。
しかしその一方で、中国4大銀行の8月前半の元建て新規融資は約700億元となり、7月前半の約500億元、6月前半の約250億元から増加しています。また、中国の7月の平均住宅価格は2ヶ月連続、前月比ベースで上昇となっています。不動産抑制策を採り、投機を抑えている中国中央政府ですが、地方政府は自己居住用の住宅を購入する一次取得者の購入は奨励しているため、これが不動産価格を押し上げているという批判があります。
このように景気がスローダウンしているのは明らかなのですが、不動産価格が上昇したり、新規融資が伸びている数字が出たりと、中国政府が早急に景気刺激策を打ち出す状況ではないということが、直近の経済指標から読み取れるところで、これが株価を軟調にしているわけです。しかし、10月に予定されている共産党大会での政権交代後はアピールのために何らかの政策が打ち出される可能性があり、その観点から考えると現在の安値は投資のチャンスと考えることも出来るのではないでしょうか。