芸術学部出身の税理士というユニークなキャリアのもと、「日本人のマネーリテラシー向上」のため、さまざまなメディアで活動する大河内薫さん。登録者数33万人を誇るYouTubeチャンネルや23万部超えの書籍、TVやラジオの出演などを通じて、お金に関することを分かりやすく発信しています。その傍ら、全国の学校へ出向いて精力的にお金の授業も行うなど、これまでの税理士の枠にとどまらない活動にも注目が集まっています。そんな大河内さんに、投資についての考え方、節税や家計の見直し方などをうかがいました。

●大河内薫さんプロフィール● 
日本大学芸術学部卒業後、税理士を目指し、2011年税理士試験に合格。コンサルティング会社や税理士法人を経て、2014年税理士として独立開業。現在は税理士の仕事とともに、YouTubeチャンネル「大河内薫のマネリテ学園」や音声プラットフォームVoicyでお金の本質的な話やニュースを発信。毎日数万人の視聴者が訪れる人気番組に。また全国各地の学校でお金の授業を行っている。人生を賭けての目標は「お金の教育を日本に普及すること」。

税金を知らないままでは「もったいない」

――大河内さんは税理士という立場で、税金について非常に分かりやすく発信されていますが、自分が納めている「税金」を知る重要性について教えてください。

日本では会社員の場合、税金が源泉徴収されるので、自分が国に納めている税金のことを知らないままでも生きていけます。自ら学ばない限り、税金について誰かが教えてくれるわけではないので、知らない人が多いのは当然です。でも家計を考える上で、税金を知ることはとても大事なことです。税金も支出の1つですので、家計に大きな影響を与えているのです。

税金は興味を持つと、面白いものですよ 。例えば、収入が同じ家庭でも税金次第で手残り金額が変わります。収入を上げるのは簡単ではありませんが、税金は知識を得て行動すれば抑えられる、つまり節税ができます。5,000円節税できれば、給料が5,000円上がったのと同じ価値があると考えられます。税金について知らないままでいるのはもったいないと思いますね。

――いざ税金を知ろう、学ぼうと思っても、手に入る情報が難しくて断念する人も多そうです。

メディアで税金が話題になっているのを見て、少し調べてみようとネットで検索しても、分かりやすい情報はあまり見当たらないですよね 。書店で税金関係のコーナーをのぞいても、難しい用語で書かれた本ばかりが並んでいるでしょう。確定申告が必要なフリーランスでも税金の知識のない方が多く、衝撃を受けました。そこに一石を投じたい、と思って書いたのが『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください』(サンクチュアリ出版)です。

2018年に出版した本ですが、2021年が一番売れて、2022年の今年もどんどん反響が広がっています。それだけ、お金や税金について知ろうとする人が年々増えてきているのではないでしょうか。

独立後からインデックス投資を手堅く実践

――大河内さんが投資を始めたのはいつ頃でしょうか。

本格的に投資にお金をまわせるようになったのは、2017年に独立して家計が安定した頃からです。 それまでにも「投資を始めてみようかな」という気軽な気持ちで、名前や商品を知っている企業の銘柄を買ったことはありました。ただ、当時は知識もなかったので、何も得るものがありませんでした。

本格的に投資を始めてからは、手堅くインデックス投資を続けています。その中でも、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった税制優遇制度をフル活用しています。これらの非課税枠内を使って、毎月定額で投資信託を購入しているかたちです。

個別株投資は売買のタイミングを見計らう手間や時間がかかることもあり、現状は投資対象として考えていません。自分には毎月の投資額を決めて、放ったらかしにできる積立投資が向いていると考えています。

――NISA、iDeCoでの投資対象を教えていただけますか。

主に米主要株価指数のS&P500に連動する投資信託と、全世界の約8,000銘柄に実質的に投資ができる投資信託に投資しています。その他、つみたてNISAやiDeCoの非課税枠外で、いくつかの米国高配当ETFにも毎月定額で投資しています 。

――暗号資産についてはいかがですか?

暗号資産は投資目的ではなく、勉強のために少し運用している程度です。ブロックチェーン技術の新しい世界を体験しておきたいという気持ちもあります。テクノロジーがどのようにお金の世界を変えるのか、この目で見ておきたいなと感じています。

継続のコツはお金に向き合う時間の習慣化

――投資を始める上で家計の改善は必要になってくると思うのですが、何から始めたら良いでしょうか。 

まずは家計などお金に関するベストセラー本を一通り読んでみることをお勧めします。その中から自分がやれそうだと思うものを実践してみると良いでしょう。本を読んだだけでは何も変わりませんので、「行動すること」が大事です。

200ページある本の全てをくまなく読む必要はないんです。ざっと見て自分に合いそうだと思った部分を少しでも行動に移せたら十分です。そうすることで、少しずつ家計を改善していけるでしょう。家計が改善できると楽しくなります。手元の資金が増えるので。それを投資やふるさと納税にまわすなどして、好循環を作れると良いですね。大切なのは、小さな一歩を積み重ねていくことです。

――小さな一歩を継続していくコツを教えてください。

お金と向き合う時間を毎日少しでもいいから作り、習慣にすると良いでしょう。平日は皆さん忙しいでしょうから、行動するのは週末だけでもいいと思います。本を読むのが大変であれば、お金に関するウェブサイトやブログの記事などもたくさんありますし。自分なりの情報収集法を選んで、無理をしないことが大切です。

通信費、保険料の見直しで手元資金を 

――物価高の懸念が広がる中で、手元資金を増やすためのアドバイスをいただけますか。

まず通信費を見直しましょう。携帯の3大キャリアを使っている方でしたら、一番ライトなプランに変更できないか検討した方が良いでしょう。外出先で何十ギガも必要な方は多くないと思います。変更の手続きは面倒ですが、一度変更すれば支出が変わります。

次に生命保険と医療保険を見直します。そのためには国の制度を知る必要があります。高額療養費制度(高額な医療費がかかったときでも上限を設けて負担を抑えてくれる制度)や遺族年金について知るだけでも、現状入っている保険について見直せるでしょう。通信費と保険料、この2つを見直すだけでも、月に数千円、場合によって数万円は手元に残るお金が増えるのではないでしょうか。

――通信料、保険料の見直しの他に出来ることはありますか? 

ふるさと納税をおすすめします。平均年収くらいの方なら実質2,000円の負担で、数万円の返礼品を受け取ることができます。僕は実生活に役立つ日用品と食品を返礼品に選ぶようにしています。最近では、高級なフルーツやお肉を選ぶこともありますね。

ふるさと納税は春夏秋冬に分けて利用するのがおすすめです。年末に駆け込みで申し込む方が多いかと思いますが、冬には冬の、春には春のものが出てくるので、季節に分けて寄附を申し込む方が旬のものを楽しめます。僕は年が明けると「さあ、ふるさと納税だよー」と声をあげています。

お金を学び、行動することで人生は大きく変わる

――お金に関する発信をされている大河内さんですが、どのような点にお金の魅力や面白さを感じてらっしゃいますか?

お金のように多くの人が普段無意識に使っていて、でも、少し意識を変えて知識を得れば人生が向上するものは、他におそらくないと思います。たとえば睡眠や医療も僕たちの生活に密接に関わっていますが、少し知っただけで人生が劇的に改善するとは言いがたい。ですが、お金については学び、行動することによって人生が向上すると思います。

日本人全員がお金に強くなれば、日本そのものが強くなると考えています。

――学校現場でお金の授業を行っていらっしゃるのも、子どもたちにお金に強くなってほしいという思いからでしょうか。

そうですね。僕はまだ自分の子どもはいませんが、甥や姪を見ていると、将来この子たちが生きていく社会はどうなるのだろうか…と考えることがあります。そのなかで、子どもたちに渡す社会を今より少しでも良くするために、自分ができることで貢献していきたいと思っています。

子どもたちは大きくなるにつれ、「お金の話なんて…」というネガティブな声が耳に入ってくることもあるでしょう。でも、それをはねのけるマインドセットを武器として携えてほしいと思っています。僕が学校現場で授業を行っているのは、そんな願いからですね。

――ありがとうございました。

※本インタビューは2022年6月21日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。