クロス円の「円安」に変化

米ドル/円は、最近もこの間の米ドル高値、円安値圏での推移が続いている(図表1参照)。ただクロス円で見ると、少し印象が変わってきた。主要なクロス円は、1ヶ月前に高値(円安値)を付けて、最近にかけては5%程度の反落(円高)となっているケースが多い。米ドル/円に例えたら、137円後半から130円程度まで米ドル安・円高に戻ったということになるので、クロス円の場合は、米ドル/円より円安の変化が気になり始めているのかもしれない。

【図表1】米ドル/円と日米金利差(2022年3月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

例えば、豪ドル/円、英ポンド/円などは、ともに6月前半にこの間の高値を付けると、最近にかけて最大で5%程度の反落となった(図表2、3参照)。これは、基本的には金利差の変化に連動した結果と言えそうだ。それに加えて、関連性が注目されるのは原油相場などとの関係だろう。

【図表2】豪ドル/円と日豪金利差(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
【図表3】英ポンド/円と日英金利差(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

原油相場も、まさに6月前半から比較的大きく下落に向かった(図表4参照)。これは、世界的な景気減速を織り込む動きと見られた。以上のように見ると、約1ヶ月前から、世界的な景気減速への懸念が浮上する中で、クロス円は円高に比較的大きく戻すといった具合に、「円安」に変化の兆しが出てきたようだ。

【図表4】WTIの推移(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ちなみに、豪ドルや英ポンドは原油相場の影響も受けやすい資源国通貨の側面もあるが、基本的には資源国通貨と位置付けられることはないユーロも、対円で過去1ヶ月、豪ドル、英ポンドと同様に最大で5%程度の反落となっていた(図表5参照)。

【図表5】ユーロ/円と日独金利差(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上のように見ると、過去1ヶ月の米ドル/円に対するクロス円の相対的な円高への戻りの大きさは、景気の先行き懸念といったリスクオフが米ドルと円の買い材料(その他通貨の売り材料)になった影響が大きかったと考えられる。

その結果、クロス円では大きく円高に戻したことで「円安」に変化の兆候が出てきたのに対し、米ドル/円は米ドル高・円安継続で「円安」不変といった具合に、クロス円と米ドル/円では「円安」の印象に差が出てきた可能性がある。

では、「円安」の変化を示すクロス円と、「円安」不変を示す米ドル/円ではどちらの示唆が正しいのか。これまで見てきたことからすると、少なくとも金利差との関係から前者が正しく、後者は修正リスクがありそうに見える。しかしながら基本的には世界的な景気減速の行方が鍵になりそうだ。