モトリーフール米国本社、 2022年6月12日 投稿記事より
主なポイント
・アマゾンの株価は圧力下にあるが、株式分割を機に反発している
・小売事業の利益率はマイナスだが、AWSの利益率は上昇
・アマゾンはAWSの高い利益率を維持しながら、下半期にインフレと小売事業の過剰なキャパシティを緩和することができるのか
株式分割が完了し、新旧の株主が2022年に注目すべき点は何か
他の多くのハイテクグロース銘柄と同様に、アマゾンの株価も2022年に入って大幅に下落していますが、先日の株式分割を前にやや反発しました。1週間前の株式分割をきっかけに、端株取引のできない投資家でも、アマゾン株を以前よりも手頃な価格で買えるようになり、新旧の投資家ともに同社のファンダメンタルズに再び着目する時が来ています。
クラウド事業のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が好調な一方で、小売事業は苦戦しています。フリーキャッシュフローはマイナスに転じていますが、経営陣は自社株買いを開始しています。こうした強弱の材料が混在した状況の中で、投資家が2022年に注視すべき点は以下の通りです。
小売事業で「やるべきことはまだある」
アマゾン株が年初来で大きく売られた最大の原因は、小売事業にあります。同社は新型コロナウイルスのパンデミックの間に物流処理能力を積極的に拡張しましたが、経済活動の再開に伴って需要は鈍化しています。拡張した設備が稼働するまでにはタイムラグがあるため、アマゾンのキャパシティは目先過剰になると予想されます。
さらに、世界全体の小売部門を率いるデビッド・クラーク氏が先日、辞任を発表し、事態を一段と複雑にしています。不確実な材料が増えただけでなく、クラーク氏が自らの意志で退職するのか、あるいは最近の業績不振を理由に辞めさせられたのかも分かっていません。ちなみに、クラーク氏は物流事業のスタートアップ企業であるフレックスポートのCEOに就任することが明らかになっています。アマゾンのアンディ・ジャシーCEOはブログで、クラーク氏の辞任を伝えるのと同時に、「コンシューマー事業で最終的に目指すところに到達するために、我々がやるべき仕事はまだ残っている」と認めました。
アマゾンは第1四半期の逆風要因として、過剰なキャパシティ、余剰人員、燃料価格の高騰を挙げ、それぞれ20億ドルずつ、合計で約60億ドルの重石になったと指摘しました。余剰キャパシティを埋めるにはさらなる成長が必要で、また燃料価格も高止まりしていることから、こうした追加コストのうち40億ドルは第2四半期も継続するとみられます。
下半期の注目点:生産性、キャパシティ、配送
まず、第2四半期決算で人員面での進展に着目しましょう。採用を縮小するか、凍結すればよいのです。アマゾンは従業員数などの情報を開示していますので、投資家は収益性を評価することができます。これは、アマゾンが抱える中でも最も「対処可能」な問題です。
過剰キャパシティに関しては、改善が見られるのは下半期になりそうです。というのも、アマゾンはキャパシティに合わせて業績を伸ばす必要がありますが、売上の急増が期待できるアマゾンのプライムデーは、2021年の第2四半期から2022年は第3四半期に移ったためです。そのため、プライムデーとその後のクリスマスシーズンまでは、キャパシティを満たすほどに売上が大幅に伸びない可能性があります。この点に関しては、次の決算発表で経営陣が発表するガイダンスとコメントに注目しましょう。
一方で、ウォール・ストリート・ジャーナルは先日、アマゾンが配送センターや倉庫のスペースを他社にサブリースすることを検討していると報じました。対象となるスペースは約1,000万平方フィートと報じられていますが、さらに増える可能性もあります。1,000万平方フィートというのは、2021年末時点でアマゾンが所有またはリースする総面積の約2%に相当します。
最後に、配送コストに注目する必要があります。第1四半期に、有料配送の件数は前年同期比で横ばいだったにもかかわらず、世界全体の配送コストは14%増加しました。通常、アマゾンはプライム会員や広告といった方法で配送料をカバーしているため、有料配送件数に対して配送コストが高くなる傾向があります。そのため、配送コストと配送件数の差が拡大しているのか、縮小しているのかに着目する必要があります。残念ながら、燃料価格が上昇傾向にあるため、配送コストは高水準が続く可能性があります。
AWSの利益率は本当に上昇しているのか?
AWSの営業利益率は、2021年第4四半期の29.8%から2022年第1四半期は35.3%に大幅に上昇しました。これは主に、サーバーの耐用年数が延長されたことが要因です。今後、AWSの高い利益率が維持されるかどうか、あるいは平均への回帰が見られるかどうかに注視する必要があります。
高水準の営業利益率が新たな基準となれば、アマゾンの株価にとっても好材料となるでしょう。なぜなら、AWSはアマゾンの中で最も収益性の高い事業であり、おそらく最も価値のある事業であるからです。AWSは過去12ヶ月間に670億ドルの売上を上げ、30%台半ばの成長を実現しています。今後数年間は成長が持続し、数千億ドル規模の事業に成長するとみられます。つまり、最終的に営業利益率が5%上昇すれば、アマゾンの本質的価値に大きな意味をもたらすことになるはずです。
結局は利益次第
アマゾンはその歴史の大半において、経常利益を生み出すことで投資家から認められており、2018年以降は特に、利益を急速に伸ばしています。金利が上昇している今、投資家は同社が毎年、一貫して利益を生み出すことを期待していると思われます。そのため、パンデミックを追い風としたブームが終わり、売上高が伸びているにもかかわらず、投資家は営業利益が前年実績を下回ることを好意的に受け止められないのです。
これらすべての要素にまたがる最大の疑問点は、アマゾンがインフレ環境においてコストを抑制することができるかどうか、そして営業利益率がどこに行き着くかでしょう。
アマゾンは巨大で複雑なビジネスです。そのため、2022年下半期に向けて全体像を把握するためには、前述のすべての要素について検討する必要があります。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾンの子会社であるホールフーズマーケットのCEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会のメンバーです。元記事の筆者Billy Dubersteinは、アマゾンの株式を保有しています。Billy Dubersteinの顧客は、記載されている銘柄の株式を保有している可能性があります。モトリーフール米国本社はアマゾンの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。