景気は水準と方向で4つに分けられ、回復期(低水準ながら改善)、拡大期(高水準・改善)、鈍化期(高水準・鈍化)、低迷期(低水準・鈍化)を繰り返すサイクルとなります。リスク資産の中心である米国は景気先行指数をみると現在鈍化期に位置しています。経験則では金利は上げ止まり、株価は回復・拡大期には劣るもののリターンが見込まれる時期です。
定性的に現況を確認すると、コロナ禍から財政サポートもあり財消費が広がりV字回復を果たした景気は、政策正常化に伴い勢いが鈍化、またインフレによる消費者心理悪化や金融引締めの影響が懸念されます。一方でサービス消費へのシフトやサプライチェーン問題の鎮静化とともに設備投資が景気をけん引すると期待され、今後成長を維持できるのか、利上げにより低迷期入りするのかを注視する段階にあります。
一方で2000年のITバブル期並みに拡大したグロース株とバリュー株のバリュエーション格差が金融正常化を機に縮小しはじめるなど、株式市場は構造的とも言える物色の変化とともに、SP500指数は高値から20%近く調整しました。過去更に大きく調整したことはありますが、景気後退時期を除けばブラックマンデー時などに限られており、景気先行き不安が台頭するなかで市場は相応に悪材料を織り込んだとも言えますし、更なる下落は景気後退を想定させます。
引き続き景気動向が注目される中で、趨勢として見られる鈍化局面でどの資産クラスが注目されるのか?米景況感の鈍化と業種別米国株の定量的な相関を見ると公益株が最も相性が良いです。一般的に配当利回りも高く、景気に業績が振れにくいディフェンシブ性から定性的にも納得感のある業種ですが、今は持続可能エネルギーというイノベーション的側面も持ち合わせており、景気鈍化に備えつつテーマ性も評価でき、投資信託等を通じて中期的に運用可能な資産クラスとして注目しています。
また金利上昇で債券価格は大きく調整しています。利上げが相応に織り込まれ、今後は量的引き締めによる金利上昇圧力を消化していく段階ですが、目下米国社債の最低利回りと株式益利回りの格差はリーマンショック以降最も縮小するなど、債券投資にも相対的な妙味が出ています。債券投資は景気が鈍化・低迷する際にはリスク資産に対する分散効果が期待されます。短期的に振れの激しい局面だからこそ改めて中期的な運用目的・運用計画を見直し、その金利であればライフプランに沿う、という投資判断も可能となります。
リセッションやスタグフレーションという言葉がよく聞かれます。歴史的には断続的な利上げは景気後退につながりますし、サイクルもやがては低迷期に入る局面が訪れます。同時に景気後退期は中期的な視点でリスク資産の買い場となってきました。短期的な相場変動に振られずに趨勢的な景気動向に注目し、また計画的な資産運用でサイクルに備えるのも大事だと考えます。