高値から8%以上も下落した豪ドル/円

先週にかけて多くのクロス円が急反落となった。その中で豪ドル/円も一時87円台まで下落し、4月中旬に記録した96円台の豪ドル高値からの最大下落率は8%以上に拡大した(図表1参照)。そこで改めて、豪ドル/円急反落の理由と、今後の見通しについて考えてみたい。

【図表1】豪ドル/円と豪日金利差 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データ及び財務省データをもとにマネックス証券が作成

私は4月中旬に豪ドル/円が96円台の高値まで上昇した後に、「豪ドル高・円安の少し気になること」(4/21付)、「続・豪ドル高・円安の少し気になること」(4/26付)といった2本のレポートを書いた。その要点は、豪ドル/円は短期的にも中長期的にも「上がり過ぎ」懸念が強くなっているということだった。
短期的な「上がり過ぎ」懸念については、90日MA(移動平均線)かい離率を参考にした。豪ドル/円の90日MAかい離率は一時プラス10%以上に拡大、経験的には「上がり過ぎ」懸念が強くなっていた可能性を示していたわけだ(図表2参照)。

【図表2】豪ドル/円の90日MAかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データ及び財務省データをもとにマネックス証券が作成

さて、先週にかけての豪ドル/円急落を受けて、同かい離率は大きく縮小した。ちなみに、90日MAは足元で87円程度。その意味では、一時87円台まで豪ドル反落となったことで、短期的な「上がり過ぎ」懸念はほぼ是正された可能性がありそうだ。

では、豪ドル/円が上昇再燃となったら、この間の豪ドル高値、96円台の更新に向かうだろうか。少し悩ましいのは、上述のように4月に96円台まで上昇した豪ドル/円は、短期だけでなく中長期的にも「上がり過ぎ」懸念が強くなっていたということがあったからだ。

中長期の「上がり過ぎ」は、5年MAや購買力平価(PPP)との関係を参考にした。図表3のように、豪ドル/円は経験的に5年MAかい離率がプラス20%前後まで拡大すると「上がり過ぎ」懸念が強まり、同かい離率は少なくとも1990年以降で見る限りプラス30%以上に拡大したことはなかった。

【図表3】豪ドル/円の5年MAかい離率 (1990年~)
出所:リフィニティブ社データ及び財務省データをもとにマネックス証券が作成

ちなみに、豪ドル/円の5年MAは足元で80円程度なので、それを2割上回った水準は96円、3割上回った水準は104円という計算になる。4月に96円台まで豪ドル高となったところで、既に中長期的にも「上がり過ぎ」懸念が強くなっており、この先豪ドル高再燃となっても、100円を大きく上回る可能性は微妙だ。

また、豪ドル/円は2000年以降で見る限り、日豪の消費者物価で計算した購買力平価を上回ったことは基本的になかった(図表4参照)。そんな購買力平価は足元で96円程度。

以上のように見ると、短期的な「上がり過ぎ」が是正され、豪ドル高再燃となっても、この間の豪ドル高値96円台を大きく上回るかは微妙だろう。

【図表4】豪ドル/円と日豪購買力平価の関係 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データ及び財務省データをもとにマネックス証券が作成