中国当局によるゼロコロナ政策の影響と新たな動き

2022年4月下旬~5月上旬の香港株は調整基調が続いています。2022年4月18日終値から5月13日終値までの騰落率は、上海総合指数が-0.1%とほぼ横ばいなのですが、香港ハンセン指数は-3.6%となっています。

上海総合指数は4月26日までは大きく下落したのですが、その後に反発基調となっています。特に4月25日~26日は大きく下落しました。中国当局が続けるゼロコロナ政策によって、経済の中心の1つでもある上海を中心とした国内のロックダウンに対する懸念が材料です。北京でも検査が行われており、ロックダウンへの懸念もありました。

しかし、この日を境に中国本土株は反発しています。中国証券監督管理委員会(CSRC)が大口投資家に株式の買い増しを促したことや中国当局がインフラ建設を強化する方針を示したことが要因です。

4月27日はセメント・鉄鋼などの建材株が大きく買われた他、機械メーカーや新エネルギー関連も買われました。

4月26日に中国共産党中央委員会の中央財経委員会は全面的なインフラ整備の強化に関する問題を検討しました。習近平国家主席は現代的なインフラ施設体系の構築が社会主義現代化国家を全面的に建設する基盤になると強調しました。会議では、全国的な水運網の改善、分散型スマートグリッドの拡大、二酸化炭素排出が少ないエネルギー拠点の建設、油ガス管網の整備などが指示されました。

IT・ハイテクなどの分野でもクラウド、ブロードバンドインフラなどで新型インフラ設備の建設を強化するとしています。4月末には1万人を超えていた新型コロナウイルスの新規感染者数も5月14日には1,789人まで落ち着いてきており、新型コロナウイルスの規制緩和への期待も相まって中国本土市場は緩やかな回復となっていく可能性があります。

香港市場はもうしばらく調整基調が続く見通し

一方の香港市場は4月28日から緩やかに反発したのですが、5月上旬に再び大きく下落し、4月27日につけた直近安値を更新してしまいました。こちらにはいくつか理由があります。

1つ目は影響を大きく受ける米国株が大きく下落していること。2つ目は中国当局がゼロコロナ政策の徹底を5月5日に指示したこと。3つ目は監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)に米国政府が人権関連の制裁を科す準備をしているとの報道が嫌気されたこと。

そして、4つ目は中国当局がインターネットプラットフォーム企業の「是正」に向けた取り組みを「できるだけ早期」に完了すべきと表明しているものの、時折、規制強化の報道がなされることから時価総額最大企業のテンセント(00700)やアリババ・グループ・ホールディング(09988)などのIT企業大手の株価が冴えないことです。 

なお、中国の経済指標はゼロコロナ政策の影響もあってかなり悪化しています。4月の中国国家製造業PMIは47.4(市場予想47.3、前月実績49.5)、中国国家非製造業PMIは41.9(市場予想46.0、前月実績48.4)、Caixin中国製造業PMIは46.0(市場予想47.0、前月実績48.1)、Caixin中国サービス業PMIは36.2(市場予想40.0、前月実績42.0)と概ね市場予想および前月実績を下回っており、景況感の境目である50を下回っています。

他方、資源価格の上昇から4月の生産者物価指数(PPI)は8.0%増(市場予想7.8%増、前月実績8.3%増)、消費者物価指数(CPI)は2.1%増(市場予想1.8%増、前月実績1.5%増)と徐々にインフレの波も押し寄せており、金融緩和の余地が少しずつなくなってきています。

いずれにしてもゼロコロナ政策で主要都市のロックダウンが続いている間、中国の経済指標は厳しい推移になるとみられている他、米国株の調整基調が進んでいることもあり、香港株は当面は軟調な株価推移となる見通しです。ただ、2023年以降を見据えた優良株の買い時という見方には変わりありません。