ゴールデンウイーク中、2日と6日の飛び石となった立ち会い日に日本株相場は予想外の強さを見せた。特に6日は前日の米国株式市場でNYダウが一時1,300ドルを超す下落となった波乱の展開を受けても日経平均は185円高で2万7000円台を回復して終えた。この堅調さの要因は第一に円安の進行、第二に好決算銘柄への買いだ。原油高を受けて資源関連株、金利上昇を受けてバリュー株が物色されたことも支えになった。

ただ、そうした背景は表層的なもので、本質はもっと深いところにあるのかもしれない。米国株が大幅安しても日本株が売られなかったのはなぜか。書いている僕自身も信じ切れていないのだが、もしかしたら日本株相場が米国株と本格的にデカップリングをし始めたのかもしれない。つまり、日本株は米国株とは(当たり前だが)別物なので、米国株が米国の事情で売られたとしても、日本株には関係ないということを投資家が認識し始めたのかもしれない。

まず米国株が調整を強いられている一番の理由は長期金利の上昇であるが、これは日本で起きていない。日銀が力づくで抑えようとしているので、むしろ逆である。インフレも日本では問題になるような水準にはない。コロナの感染者数はけた違いに少ない。

そして円安である。この通貨安は日本のグローバル企業の業績にプラスになることは誰の目にも明らかだ。しかし、それだけではない。5日付のFinancial Times(電子版)に“The yen: a cheap haven for uncertain times”というタイトルの論説が掲載された。寄稿者はゴールドマンサックスの為替戦略のCo-Headである。その中で僕が注目したのは日本の巨額な対外純資産(資産1260兆円、負債850兆円)に言及している点だ。日本は世界一の純債権国の座を何年にもわたって維持してきた。円安になればなるほど、日本が有する対外純資産の価値は膨れ上がる。それがますます日本を「安全な逃避先(safe haven)」にするというわけだ。「悪い円安」という議論が一部にあるが、グローバル目線での投資という観点からは円安は日本の魅力度を高めることは間違いない。

さて、そうした中、今週の最大の注目は米国で発表されるインフレ指標である。11日に4月のCPI、12日にPPIが出る。3月のCPIが40年ぶりの高さになった理由は原油価格の高騰を受けたガソリンの値上がりだった。その原油も3月につけた直近の高値を抜けていないので、4月のエネルギー価格は3月に比べれば下がるはずである。よって11日に発表される4月のCPIはインフレの落ち着きを示す可能性が大である。株式市場がそれにどのような反応をするか目が離せない。

国内の決算発表も佳境を迎える。9日の日本郵船(9101)、10日のソニーグループ(6758)、三菱商事(8058)、11日のトヨタ自動車(7203)、12日のソフトバンクグループ(9984)、東京エレクトロン(8035)など主力企業の決算発表が目白押しだ。

米国の物価指標が波乱要因だが、基本的には円安・好決算を受けての株高基調が継続すると予想する。