米ドル高・円安はどこまで続く?
米ドル/円は先週、一時130円を大きく上回りました。では、この米ドル高・円安はどこまで進むのでしょうか。今回は、次の大台である140円に達する可能性もあるのかについて考えてみたいと思います。
米ドル/円は、2021年1月の102円から、先週にかけて130円を超えるまで上昇してきました。そんな米ドル/円に日米金利差を重ねてみると、細かいズレはあったものの、基本的には金利差米ドル優位が拡大する中で米ドル高・円安が展開してきたことがわかります(図表1、2参照)。
次に、日米金利差を分解し、日本と米国の2年債利回り推移を見たのが図表3です。これを見ると、両者のボラティリティ(変動率)にこの間大きな差があったことがわかるでしょう。具体的には、米金利が大きく上昇する中で、日本の金利はほとんど横ばいが続きました。以上からすると、130円を超えるまで米ドル/円上昇が続いたのは、米金利が大きく上昇する一方で、日本の金利がほとんど上昇しなかったためということになるでしょう。
ここで少しだけ横道に逸れますが、4月28日の日銀会合の後から一気に2円以上も大きく米ドル高・円安に振れたことについて確認したいと思います。既に見てきたように、日本の金利は横ばいが続いてきたわけで、大きく下がったわけではありませんでした。その意味では、日本の金利独自の為替相場への影響としては、金利が大きく上昇することで円高をもたらす可能性はあるものの、大きく金利が低下して円安をもたらす可能性は論理的には考えにくいでしょう。
実際に、4月28日の日銀会合後も、日本の金利低下は限定的にとどまりした。その割に、1日で2円以上も大きく円安に動いたのは、理屈で説明できない、極めて投機的な動きだったということになるのではないでしょうか。
さて話を戻します。これまでのように、日本の金利のほとんど横ばいの動きがこの先も続くなら、米ドル高の行方はすこぶる米金利次第ということになるでしょう。その米金利のうち、金融政策を反映する米2年債利回りは、前回の利上げ局面のピークである3%近くまで上昇してきました(図表4参照)。
前回の利上げ局面で政策金利、FFレートは2.5%まで引き上げられました。その意味では、まだFFレートは3月の最初の利上げで、上限が0.5%まで引き上げられただけですが、2年債利回りは早々に2.5%までのFFレート引き上げをほとんど織り込むところまで上昇したと言えそうです。
ただ、利上げ局面においては、2年債利回りはFFレートを最大で1~2%といった具合に大きく上回ることも少なくありませんでした(図表5参照)。今回の利上げ局面で、FFレートは2.5~3%程度まで引き上げられるといった見方が、今のところの基本でしょう。そんなFFレートを2年債利回りが1~2%も上回るなら、2年債利回りは4%前後まで一段と上昇する可能性もあるのではないでしょうか。
米ドル/円と日米2年債利回り差のこれまでの関係を前提に、この先、日米2年債利回り差米ドル優位が4%まで拡大するなら、米ドル/円は140円近くまで上昇するという見通しになります(図表6参照)。
次に、米ドル/円と5年MA(移動平均線)との関係について見てみましょう。米ドル/円が130円を超えてくると、5年MAかい離率も2割程度まで拡大してきました(図表7参照)。同かい離率が2割以上に大きく拡大したのは、1990年以降では2回しかなかったので、既にこれまでのところでも、行き過ぎた米ドル高・円安の懸念が高くなってきたと言えそうです。
ただ、上述のように、これまでも5年MAかい離率が3割以上拡大した例はありました。足元の米ドル/円の5年MAは110円程度ですので、それを3割上回ると140円を上回る計算になります。
以上を整理すると、130円程度の米ドル高・円安は、既に「行き過ぎ」の可能性があるものの、米金利上昇がさらに続くようなら、140円まで行き過ぎた米ドル高・円安が一段と広がる可能性はありそうです。そんな米ドル高・円安にとっての最大のリスク・シナリオは、日本の金利が横ばいから上昇に向かうということではないでしょうか。