米ドル/円が急伸した背景とは

振り返ると、3月の米ドル/円相場は115円処からのスタートでした。

それが、最初の節目である116.35円処を超えたのは3月11日、次の節目である2016年12月高値=118.67円処を超えたのは16日で、その僅か8営業日後には一時125円台に乗せる場面を垣間見ました。

この3月の値上がり幅に対する38.2%押しは121.25円処であり、目下は同水準が下値サポートとして機能しているということになります。

米ドル/円急伸の背景には、1つに年度末に向けた国内輸入勢による実需の買いや、国内輸出勢によるオプションのヘッジを目的とした米ドル買いがありました。そして、何より日銀による決死の「連続“指し値オペ”発動」が一段の上昇に拍車をかけたことは間違いないでしょう。

その意味で、先週4月1日の新年度入りから切羽詰まった米ドル買いや国債先物売りなどという年度末特有の資金フローが見られなくなっていることは、改めて確認しておくことが重要であると思われます。

加えて、先週3月29日あたりから財務省や官邸の周辺がヤケに騒々しくなっていることも見逃せません。政府および当局も、さすがに過度な動きを抑えるための“介入ポーズ”を取らざるを得なくなっている模様で、ことに岸田首相と黒田日銀総裁による会談が3月30日に設けられたことのインパクトは決して小さくないものでした。

その結果、米ドル/円は121円台前半の水準まで一旦急落しましたが、なおも下値の堅さが感じられます。

米利上げがほぼ確実も、米株価は落ち着きを見せる展開

先週4月1日は、新年度入りならではの新規投資分が資本筋から入っていた模様で、実際に早朝から実需の買いが断続的に入っていました。そのため、米ドル/円は再度122円台後半の水準まで買い上げられましたが、買い一巡後は122円台前半の水準に落ち着いて、同日のNY時間に予定されていた3月の米雇用統計発表を待つこととなりました。

その結果は「米連邦準備制度理事会(FRB)が掲げる積極利上げ方針を追認する内容であった」と市場には受け止められた模様で、発表後に米ドル/円は123円台を一旦試す動きを見せましたが、後に発表された3月の米ISM製造業景気指数が弱めの結果となったことで、結果的に122円台半ばの水準で週を終えています。

押さえておきたいのは、今回の米雇用統計の結果によって「5月の0.5%の米利上げがほぼ確実になった」と市場に受け止められた状況にあっても、同日の米株価がさしてネガティブな反応を示さなかったことです。

そうでなくとも、足元では米2-10年債利回りが逆イールドの状態となり、米景気の先行き懸念が台頭し始めている最中でもあります。その意味で、当分の間は米株価の行方をじっくり見定めることがより重要になると思われます。

そうした中で株価が大きく崩れない限り、今週の米ドル/円は122.50円処を軸とした121.25-123.75円のレンジ内で推移する可能性が高いと見ます。

ユーロ/米ドルは下値サポートの動きに注目

ユーロ/米ドルについては、先週3月31日に一時1.1185ドル処まで値を上げる場面もありましたが、それも月末・期末のフローという側面があり、週末に向けては1.1050ドル割れの水準に値を沈めることとなりました。

やはり、天然ガスの供給継続が不安視される状況ではユーロの上値も重くなりがちであり、目先は21日移動平均線や3月7日安値と28日安値を結ぶサポートラインが下値を支えるかどうかに要注目です。

これらの下値サポートが立派に機能するようであれば、ユーロ/米ドルは改めて1.1200ドル処を試す可能性もあると見ます。

ユーロ圏内のインフレ率が確実に高まっていることは疑いの余地がなく、あとは欧州中央銀行(ECB)がウクライナ問題との絡みで具体的な対策を先送りする姿勢を示すかどうかを見定めて行くことが重要でしょう。