地政学リスクや世界的なインフレ懸念、ゼロコロナ対策などの影響色濃く
2022年3月前半の中国株は、中国本土市場・香港市場ともに急落となっています。2月28日終値から3月14日終値までの騰落率は、上海総合指数が-6.9%、香港ハンセン指数が-14.0%です。
上海総合指数は特に3月7日から大きく下落し、その後に3月9日に長い下髭をつけて下げ止まったのですが、3月14日に再び大きく下落しています。
3月9日からの下落は、ロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクへの懸念、エネルギー価格が大きく上昇する中、世界的なインフレ懸念への高まりや、エネルギーコスト上昇が世界経済に悪影響を与えるとの懸念からの下落です。エネルギー価格上昇については、アジアの大半の国はエネルギー輸入国であるため、影響を受けやすい状況にあります。
しかし、その商品価格の急騰も一旦天井をつけて、株価も短期的に反発したのですが、その後、新型コロナウイルスの「オミクロン株」感染拡大の影響から中国の吉林省長春市や広東省深セン市で再び都市封鎖(ロックダウン)が発令され、その影響が大きく懸念されています。
深セン市では公共交通機関が止められ、大半の企業にオンライン以外の事業活動の停止が求められました。世界的には、新型コロナウイルスとの共生、いわゆるウィズコロナ政策方針が一般的となってきている中、中国はゼロコロナ政策を維持しています。
3月初めに中国国家衛生健康委員会の専門家チームメンバーが微博(ウェイボー)を通じて、ゼロコロナ政策からウィズコロナへの政策転換を近い将来に示すとコメントしたことから、ゼロコロナ政策の解除も期待されていたのですが、まだ、ゼロコロナ政策が続く様子です。
2022年秋には、通常であればトップが交代するタイミングである、中国共産党第20回全国代表大会が開催されます。しかし、そこまでの大きな政策転換はこれまでの政策の失敗を認めることにつながり、政策ミスを肯定しないために現状のゼロコロナ政策が続く可能性が高いとの見方も出ています。
世界とはやや周回遅れで中国ではコロナ対策による景気の押し下げが、もうしばらく続く見通しです。
香港株はIT株への圧力が続く
ところで、中国本土株以上に香港株は大きく下落しています。ウクライナの地政学リスクの影響を受けたことや商品価格の上昇によるインフレ懸念が株価を抑えた点は中国本土株と同じですが、香港株にはそれとは別に2つの悪材料があります。
1つは中国本土とも重なるのですが、新型コロナウイルスが香港でも感染再拡大し、中国の指示によって香港でも都市封鎖(ロックダウン)が計画されていることにあります。
香港当局の計画によると、3月26日~4月3日まで新型コロナウイルスの強制検査を行い、4日間のロックダウン(都市封鎖)を行う予定とあります。もっとも、検査時期が3月後半からである理由は、コロナ感染拡大が自然に収束しつつある時期に大規模検査を行うべきとの考えで、特に大きな心配はいらないかもしれません。
しかし、前述の通り、香港から地理的に近い広東省深センでも都市封鎖(ロックダウン)が行われることから、中国政府のゼロコロナ方針が当面は変わらない見通しであることを考えると、今後も香港でゼロコロナ政策が採られるのではないかと注意する必要はあるでしょう。
そしてもう1つの要因は米国の株式市場に上場する中国株5銘柄について、上場廃止となるリスクが、米当局より発表されたことです。
1銘柄を除いてあまり有名でない銘柄ですが、名前の挙がっていないより有名な銘柄(アリババ・グループ・ホールディング、バイドゥ、JDドットコム、滴滴出行など)が同様に上場廃止に追い込まれるのではないかとの懸念から、軒並みリスク回避で大幅下落しました。
さらにテンセントに、傘下の微信支付(ウィーチャットペイ)がマネーロンダリングにかかる規則違反を犯したとのことで過去最大の罰金が科せられる可能性があると報じられたこともマイナス要因であり、中国当局のIT企業への引き締め懸念も再燃しています。
いずれにしても香港市場はもうしばらく軟調な株価推移が続きそうです。優良銘柄については中長期で見れば買いのチャンスが続くことになりますが、まずはダブルボトムや出来高を急拡大させての上昇など、底打ちのサインの出現を待ちたいところです。