資源、穀物相場の「2008年との類似」

ウクライナ情勢を受けて、「青天井」かのように見えた原油相場だったが、9日は急落となった(図表1参照)。主因はやはり、異常なまでの「上がり過ぎ」ということではないか。

【図表1】WTIの推移 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

例えば、WTIの90日MA(移動平均線)かい離率は、2000年以降ではプラス40%程度まで拡大したことが2回あったが、今回は一時プラス50%まで拡大した(図表2参照)。これはもちろんWTIといった原油相場に限ったことではなく、資源・穀物などの総合指標であるCRB指数の90日MAかい離率も、短期的な「上がり過ぎ」が、2000年以降で確認出来る限りでは突出した動きになっている可能性を示している(図表3参照)。

【図表2】WTIの90日MAかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表3】CRB指数の90日MAかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

これまで見てきた90日MAかい離率は、基本的に短期的な相場の行き過ぎを確認する指標と位置付けている。これに対して、中長期的な相場の行き過ぎを考える上で参考にしているのは5年MAかい離率だが、これで見ても記録的な「上がり過ぎ」を示す結果が続出している。

例えば、WTIの5年MAかい離率は、1990年以降で見る限り2008年6月にプラスかい離率の最高を記録したが、足元ではそれに急接近する動きとなっている(図表4参照)。ちなみに、2008年7月、WTIは150米ドル目前で上昇一巡となると、その後ほんの数ヶ月で30米ドル台まで大暴落に向かうところとなった。

【図表4】WTIの5年MAかい離率 (1990年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

当時原油相場が急騰から暴落へ大転換となった大きな要因は、記録的な「上がり過ぎ」の反動だったと考えられる。上述した最近のWTIの5年MAかい離率は、そんな2008年6月に迫る動きになっているわけだ。

さらに言えば、CRB指数の5年MAかい離率は、最近にかけて2008年6月の記録を上回る動きとなってきた(図表5参照)。2008年6月は、上述のように原油相場などが急騰から暴落へ大転換に向かう直前のタイミングだった。その意味では、足元は原油相場だけでなく資源、穀物相場全般が、記録的な「上がり過ぎ」により、いつその反動から急落に転じてもおかしくない状況にあるのではないか。

【図表5】CRB指数の5年MAかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

以上のように、WTI、CRB指数とも、90日MAかい離率、5年MAかい離率がともに2008年以来の記録的な「上がり過ぎ」を示すものとなっている。最後にもう1つ、2008年以来として引用するのが、WTIと豪ドル/米ドルの関係だ(図表6参照)。代表的な資源価格である原油と、代表的な資源国通貨の豪ドルは、中長期的に相関関係がとても高いが、足元はまさに2008年以来の大きなかい離となっている。

【図表6】WTIと豪ドル/米ドル (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

2008年に原油など資源価格、穀物価格が急騰から暴落に大転換したのは、既に2007年からサブプライム・ショックといった「信用バブル崩壊」で先進国の景気が減速に向かい始めていた中にもかかわらず続いていた上昇相場の反動だったと考えられる。要するに、原油などは基本的に需要、つまり景気の関数であり、それで説明できる範囲を超えた動きは「行き過ぎ」として結果的に修正されるということだ。

これまで見てきたように、2008年と似たような指標の動きがここに来て続出していることは興味深い。資源、穀物相場に影響力の大きいロシア、ウクライナ要因の影響が大きいということではあるだろうが、2008年の動きを参考にすると、原油相場の上がり過ぎに象徴される「行き過ぎ」の本格的な反動と、その影響は注目されそうだ。