2022年4月から、高校で「資産形成」に関する授業が始まります。金融商品の特徴や資産形成について学ぶ「投資教育」が、家庭科の授業の一部に組み込まれることになるのです。

同じく2022年4月から成人年齢が18歳となり、翌年の2023年1月からは18歳の誕生日を迎えていればNISA口座の開設もできるようになります。早期から資産形成を始めるという上で、投資について学ぶという意味は大きなものになるでしょう。

さて、最近は家計相談時に、または取材などで「子どもにはどのように投資のことを教えると良いか」という質問をよく受けるようになりました。今回は、ご家庭での「子どもへの投資の教え方」についてお伝えします。

投資とはお金を増やす手段の1つであると教える

「投資教育」というと、まず投資とはなんぞや、といった難しい説明をしたがるものですが、実は子どもにとって一番必要な学びはそこではありません。お金は生きるための道具であるという認識を持ち、自分の将来に必要なお金を作る手段の1つに投資があるということを知ることが必要なのです。

コツコツと預貯金でお金を貯めていくことも大切ですが、それだけでは目標金額に届かない、将来必要な資金が不足するというときに、貯金と合わせて投資に取り組むことで目標額を早く達成できる可能性を高める手段の1つである、と認識できることが大切です。

私たちがお金を増やすためにできることは、収入を上げること、支出を減らすこと、すぐに使わないお金を運用に回すことの3つしかないのです。

その目標を達成するための手段として投資にはどういうものがあるのか。それを知るために、金融商品や投資法についての知識を深めていく。そういった段取りが、子どもが最初に投資を学ぶ上で大切なことだと思います。

すぐに未成年口座を開くべきか 

子どもとある程度投資の話をした後、すぐに子どもの証券口座(未成年口座)を開設すべきかと聞かれることがよくあります。これはお子さんの受け入れ度合いにより異なると思っています。

子どもが投資に対して興味津々なら、すぐに口座を開設すると良いでしょう。不安が大きいようなら、まずは親の口座で一緒に投資について考え、取り組んでみるのも良いと思います。「これでなくてはダメ」というルールはありませんから、柔軟に考えてください。

大切なことは、自分の将来にとって必要なお金を本当に投資で増やすことができるのか、ということに対し、子ども自身が身をもって感じ、考えることができるか、です。

8人家族である我が家では「家族マネー会議」で月に一度、子ども達とお金の話をじっくりするのですが、その時に親の証券口座の成績を子どもに見せています。評価がプラスになっている月があれば、マイナスになっていることもあるのですが、一緒に見ているうちに「投資もやり方によっては怖くない」ということを子ども自身が理解するようになります。

証券口座を見ていると、「どうしてこうなるのか」などと説明を求められることがあります。質問がなくても、なんだろうと思いながら見ている子どももいます。そういう時をチャンスに、株や債券などの商品とその特徴、数十から数千の銘柄を組み合わせて1つの商品となっている投資信託について、長期・分散・積立・低コストの投資の有用性、複利の効果についてなど伝えます。

子どもは興味を持っているときこそ、一番理解度が早いもの。そのときをチャンスと捉え、しっかりと教える。逆に言えば、興味を持ってもらうために、親の投資のこと、例えば投資商品や投資法、成績などを見せるということです。

我が家では、このように投資に触れてきたことで、未成年口座を開き、自分の貯金の一部を使って積立投資をする子どももいますし、成人後はiDeCo、つみたてNISAに臆することなく取り組んでいる子どももいます。子どもによっては「操作に不安がある」と言いながらも、口座開設後はコツコツと投資を積み増しながら設定などをしています。

投資は「習うより慣れろ」が大事

とはいえ、我が家のように、親の投資を見て学ぶことができるご家庭ばかりではないと思います。投資を始めていないご家庭では、親子で証券口座を開く、親の口座で一緒に取り組むなどして、親子で投資を始めてみましょう。「習うより慣れろ」のスタンスです。

子どもが自分の口座で投資をする場合、おこづかい程度では運用が難しいのではないかと思われるかもしれません。ですが、問題ありません。

いくつかのネット証券では100円から投資信託の積立投資ができるため、そのような口座でスタートすれば良いのです。100円では、投資の成果を感じにくいと思うかもしれませんので、その場合小さなお子さんならお年玉などを活用して少し金額を増やす、また高校生くらいであればアルバイト代の一部を投資に回しても良いでしょう。

とにかく親子で一緒に投資を始め、その中で商品について話し合ったり、成果を確認し合ったりすることで、互いに投資力を増していけることになると思います。一緒に本で学んだり、インターネットで情報を集めたりということもできるでしょう。

実際、私のところにくるお客様でも、投資の勉強をするときにお子さんを連れてくる、という方が増えています。高校生の場合、親よりも理解があり、親の投資をサポートしているなどということもあります。

ご家庭で行う子どもへの投資教育は、いかに投資に興味、関心を持ってもらうかというところがキモになると思います。そこを乗り越えると、投資とは何かということをスムーズに理解していくと思いますし、投資に対しておかしな先入観を持つこともないでしょう。