ひとりの人間が出来ることには限界があるとも云えるが、同時にひとりの人間が惹き起こすことには限界がないとも云える。今回のウクライナ危機を見ていると、正にそう感じます。プーチンひとりの力はオートバイ一台よりも小さく、工作用機械と喧嘩すれば一瞬でやられてしまうでしょうが、一方でプーチンひとりのせいで、世界中が混乱に突き落とされるかも知れません。

傍目から見ると、プーチンは強迫観念に苛まれ、文字通り狂気になっていて、暴走しているように見えます。しかしそれを、近くにいる人が誰も止められない。報道を聞いていると、プーチンはコロナ禍が始まって以来ほとんど人と会っておらず、極々側近の部下だけと話しているとのこと。今から考えるとそれが問題ですね。世界有数の軍事力と、何よりも世界最多の核兵器を持っている国の独裁者と、西側諸国は2年間もほぼ没交渉であったこと、それが問題です。

2014年、ロシアによるクリミア併合。様々な問題が生まれ始めたこの時、G8はロシアを排除してG7に戻しました。これが果たして正解だったのか。地球最大級の破壊力を持つ国の独裁者を、常に世界の文脈にさらして、平行線であろうと、或いは激しい意見のぶつけ合いであろうと、コミュニケーションを取り続けるべきだったのでないか。振り返って考えると、そんな風にも思えます。今はもうすべてが手遅れなのか。

いや、そうではなく、最後まで対話をしようと努力し続けることが、きっと何か出口を見いだすことに繋がるのではないでしょうか。解決はしない。満足も出来ない。バランスの取れた不満を見いだすしかないのでしょう。