ドルストレートとクロス円
主要なクロス円の小動きが続いている。ユーロ/円や英ポンド/円などは、ほとんど1年近く、僅か5%程度のレンジ中心での方向感の乏しい小動きが続いた(図表1、2参照)。
2つの通貨ペアとも、最近にかけて金利差が大きく変化する局面があった。しかし、それにもほとんど反応せず、結果として小動きの延長となった。
【図表1】ユーロ/円と独米金利差(2021年1月~)
【図表2】英ポンド/円と日英金利差(2021年1月~)
例えば、2月にECB(欧州中央銀行)が、インフレ懸念を受けて金融緩和の見直しを急ぐといった、いわゆる「タカ派」化への思惑が浮上し、独金利は大きく上昇する局面があった。しかし、それに対するユーロ/円の上昇は極めて限定的なものにとどまった。
上述のように、ユーロ/円や英ポンド/円は、一時的に金利差が大きく変化する局面があったものの、それに反応することなく小動きが続いた。それは豪ドル/円なども基本的には同様であり、主要なクロス円にほぼ共通したものだった(図表3参照)。
5%の値幅とは、米ドル/円に例えると、110~115円程度ということになるが、それほど狭い範囲での値動きが1年近くもの間、主要なクロス円相場において続いているわけだ。
【図表3】豪ドル/円と日豪金利差(2021年1月~)
これまで見てきたように、金利差拡大にもほとんど反応せず、クロス円が記録的に狭い値幅での小動きが長期化している理由は何か。考えられるのは、クロス円といった具合に、対円での相場がメインになるわけではなく、対米ドルでの取引、それを一般的には「ドルストレート」と呼ぶが、その影響が大きかったということではないか。
以上のようなことは、米国の金融政策の転換期において、為替相場でも米ドルを買うか売るかといったことの影響が大きくなっていることを示しているのだろう。