景気悪化を避ける対策により中国本土株は底堅い値動きが続くか

2022年2月後半の中国株は、中国本土市場・香港市場でまちまちの動きとなっています。2021年2月14日終値から2022年2月28日終値までの騰落率は、上海総合指数が+1.0%、香港ハンセン指数が-7.5%です。

上海総合指数は旧正月前の1月28日終値からですと+3.0%と大きく上昇しています。株価は1月28日に大底をつける形で、その後は底値でもみ合っている印象です。

ただ、株価は50日移動平均線と200日移動平均線の下で推移しており、さらに200日移動平均線を50日移動平均線が下に突き抜けるデッドクロスも発生しています。そのため、しばらくは底値圏でのもみ合いが続きそうです。

一方、香港ハンセン指数は1月につけた年初来安値を下回って推移しており、50日移動平均線も200日移動平均線も下向きのままの推移となっています。

中国本土株が堅調に推移している理由は金融緩和や財政政策に対する期待によるものでしょう。中国は最優遇貸出金利(1年物)を2021年12月に3.85%から3.80%に引き下げ、2022年1月には3.70%まで引き下げています(2月は引き下げなしで市場予想通り)。

さらに中国国営の「中国証券報」では、2月に入り、今後、中国人民銀行が預金準備率や金利の引き下げに踏み切る可能性があると述べている他、雇用や民生分野への財政支出を増やすべきとの記事を掲載しています。

ちなみに既に中国は2月に「東数西算」という、東部のデータを西部で計算処理する大規模なインフラ整備プロジェクトを発表しており、中国本土市場では、クラウドやビッグデータの処理に関連する銘柄が買われています。

今後も中国では景気の悪化を避けるために金融緩和や財政投資拡大が行われる可能性が高く、中国本土株は比較的底堅い値動きで推移するのではないかと予想されます。

香港市場は引き続きIT企業への重しが負担に

一方、旧正月明け後、エネルギーセクターや金融セクターを中心に上昇してきた香港株ですが、2月18日から風向きがやや変わります。

相場の下げを主導したのはITハイテク関連です。まず、2月18日に中国の生活関連サイト運営大手の美団(03690)が14.9%安と大きく売られました。中国当局がネット出前企業に対し、手数料を引き下げるなどの飲食店向け支援を求める方針を示したことが嫌気されました。

ITハイテク関連企業にはそれ以外にも、偽造品を販売したり、販売を助長したりしているとみられる市場をまとめた米政府のリストに、中国のアリババ・グループ・ホールディング(09988)とテンセント(00700)の運営する電子商取引サイトが含まれたことも悪材料となりました。

その他、中国当局が国有企業や銀行に対し、アント・グループとの取引状況やつながりを改めて精査し、報告するよう求めたとの情報が伝わったり、中国当局がゲーム認可番号を交付しない見通しと伝えたり、メタバース関連への監督・管理を強化する動きも出ているといった厳しい報道が続いています。

中国当局は引き続き「共同富裕」思想に基づくIT企業の締め付け政策を打ち出し続けており、これは2022年秋に行われる、5年に1度の中国共産党大会まで継続する可能性がありそうです。

なお、IT企業の規制強化以外にも、中国当局が香港に対し、新型コロナウイルスに対して厳しい措置を行うように指導し、結果として香港域内全体に外出を禁じるロックダウン(都市封鎖)が行われる見通しです。

これはもちろん香港経済にマイナスです。さらに中国本土と異なり、ウクライナの地政学的なリスクによる海外市場の不安定な値動きが波及しやすいといった側面もあります。

このように悪材料が重なり、なかなか上昇トレンドへの転換の見通しが立てにくい香港株ですが、コロナ対策にしてもウクライナの地政学的なリスクにしても、基本的には短期~中期的な株価下落要因と言えます。

そのため、株価が大きく下がったところは優良銘柄の投資を検討する良い機会であるとの見方で良いのではないかと思われます。