ビットコインの価格が2021年11月の高値から暴落し、現在においても下落基調が続いています。高値掴みをしてしまった人は含み損を抱えながら「やっぱりビットコインに投資するのはリスクが大きい」などと思っているかもしれません。あるいは既に投げ売りをしてしまった人もいることでしょう。ビットコインは他のアセットと比べても値動きが激しいため、この暴落を最初に経験した時には投資経験が豊富な人でも冷静さを失ってしまうかもしれません。
このようなビットコインの値動きに振り回されない投資手法としては積立投資が挙げられます。積立投資とはたとえばビットコインを毎月決まった日に、一定額ずつ購入していくという投資手法です。毎月の購入額が決まっているため、直近価格に関係なく取引することができ、下落基調であっても月々の購入量が増えることで心理的な負担も軽減されます。
また、積立投資では一回あたりの購入額が少額であっても、中長期的に積立を続けることで安定した利益を得られる可能性が高まります。これは投資するアセットが将来的に成長していくことが前提となりますが、ビットコインの場合には暗号資産市場がまだまだ発展途上であるため、今後も市場の拡大とともに価格が伸びていくことが期待されています。
ではどの程度の期間、ビットコインの積立を最低でも継続すれば良いのでしょうか。一つの目安としてビットコインの半減期スパンにあたる4年間が考えられます。半減期とはビットコインのマイニングによる新規発行量がおよそ4年に1度半減する仕組みです。これによってビットコインの市場供給量が減るために価格も上昇していくことが期待されています。
2017年1月からビットコインを5年間(毎月2万円)積み立てていると?
仮にビットコインを2017年1月から毎月1日に2万円ずつ、5年間にわたって積み立てていた場合に、現在における投資の成果がどのようになっているのかをみてみましょう。
ビットコインの価格は2017年12月にバブルの絶頂期を迎えていましたが、その後は取引所のハッキング事件が相次いだことを受けて低迷期に入りました。規制環境の整備や企業の市場参入が進む中で価格が次第に回復し、2020年5月には3度目となる半減期を迎えました。半減期後には、新型コロナウイルスに伴う緩和マネーの後押しもあり、およそ4年ぶりに価格が高騰する展開となりました。
このような半減期前後の値動きを踏まえた上で図表1の積立シミュレーションをみると、バブル崩壊後の下落局面にあった2019年にかけては累計BTC評価額が購入累計額を下回ったことがありますが、ほとんどの期間では利益がプラスで推移しています。また、史上最高値を記録した2021年11月には累計BTC評価額が一時1,500万円近くにのぼり、資産額が約5年間の累計購入額120万円に対し12倍以上に増えています。
執筆時点ではビットコインの価格が400万円台前半にまで下落していますが、それでも資産額は7倍以上に増えています。また、5年間で約2BTCを積み立てており、仮にこのまま下落が続くとしても1BTC=60万円を割り込まない限りは投資の利益が出ていることになります。
今回のビットコインの暴落によって含み損が出てしまっている人はさらなる下落への不安があることでしょう。しかし、図表1のように、価格高騰のタイミングで高値掴みをしてしまった人でも、積立を継続することで購入の平均単価が下がり、いずれは大きな利益に転じる可能性があります。
これまでビットコインは過去3度の半減期を迎えていますが、いずれも半減期後からその翌年にかけて価格が大きく上昇しました。次の半減期が予定されるのは2024年です。回を重ねるごとに上昇比率は小さくなっているとはいえ、半減期翌年の2025年には大相場が再び訪れるかもしれません。
2017年1月にビットコインをスポットで100万円相当購入していると?
一方で、仮にビットコインを2017年1月にスポットで100万円相当購入していた場合に、現在における投資の成果がどうなっているのかをみてみましょう。
図表2をみると、ビットコインが史上最高値を記録した2021年11月には、2017年1月に100万円で購入した約8.5BTCの評価額が6000万円以上に膨れ上がっています。直近においても大きな利益を確保しており、ビットコインの価格が90%下落しても損失が出ることはありません。
このように早い時期からまとまった量のビットコインを手にした人は今では大きな富を得ています。だからこそビットコインに投資する際には大きなリターンを期待してしまうわけですが、ここから再び数十倍にまで価格が上昇する期待値は過去と比べれば小さいでしょう。しかし、ビットコインがよく比較される金に対しては時価総額でまだ10倍以上の伸びしろがあるとされています。
その中でビットコインをスポットで購入することも一つの選択にはなりますが、ビットコインの価格が高騰している今では、まとまった量を購入するのに巨額のお金が必要になります。これから暗号資産投資を始めようという方がいきなり大金をビットコインに投じることは難しいでしょう。仮にそれだけのお金を用意できたとしても、巨額だからこそ含み損を抱えた時の心理的な負担も大きくなります。
また、購入時から長期にわたって投資資産を保有し続けることは実は簡単なようで最も難しいこととされています。スポットで購入した際には日々変動するビットコインの評価額が気になり、毎日の値動きやニュースを確認することに時間をとられるでしょう。冒頭で述べたように暴落時には慌ててビットコインを売りはらってしまうリスクもあります。
一方で積立投資の場合には少額から長期的に毎月コツコツ投資することで将来的には資産を形成することができます。毎月の投資額も決まっているため、急な価格変動にも落ち着いて対応することができます。このように中長期目線での投資を前提とした場合には、ビットコインの目先の値動きに振り回されないためにも、やはり積立投資のほうがが堅実と言えるでしょう。
ビットコインの他に積立投資に向いている暗号資産は?
ビットコインの他に積立投資に向いている暗号資産では、時価総額2位のイーサリアムが挙げられます。イーサリアムは、ブロックチェーンを活用した分散型アプリケーション開発のプラットフォーム(以下、Dapps)として機能し、その上で取引を処理するための通貨として使われます。
今ではイーサリアムの上に数多くのDappsが作られており、Dapps情報サイトのダップレーダー上では3000以上のDappsが掲載されています。その中でも特に注目を集めているテーマが分散型金融(以下、DeFi)とノンファンジブルトークン(以下、NFT)です。
イーサリアム上での開発や取引が盛んになれば、イーサリアムの暗号資産としての価値も必然的に高まっていきます。図表2はイーサリアムのBTC建て価格およびドミナンスの、2020年以降の推移を示したチャートになります。DeFiやNFTが流行する中でイーサリアムのビットコインに対する価格と、暗号資産市場全体に占める時価総額の割合がともに上昇しています。
今後はイーサリアムの普及とともにDeFiやNFTの他にも様々なテーマのDappsが開発されていくことが予想されます。これに伴ってイーサリアムの価格も中長期的に上昇していくことが期待できるため、定期的に積み立てることで将来的には安定した利益を得ることができるかもしれません。
株式VSビットコイン、イーサリアムの積立、資産別のパフォーマンスのシミュレーション
最後に、ビットコインとイーサリアム、米国株(NYダウ)と日本株(日経225)に、2017年1月から毎月1日に2万円ずつ、5年間にわたって積み立てていた場合に、投資のパフォーマンスにどのような違いがあったかをみてみましょう。
図表4の通り資産ごとのパフォーマンスをみると、5年間の元本120万円に対してビットコインは約1300万円(≒10.8倍)、イーサリアムは約4600万円(≒38.3倍)、NYダウは約170万円(≒1.4倍)、日経225は約150万円(≒1.2倍)となっています。株式ではなく暗号資産で積み立てた方が資産額が遥かに増えており、暗号資産で比べてもここ数年で注目を集めてきたイーサリアムの方がビットコインよりも成績が良くなっています。
この5年間で暗号資産のパフォーマンスが大きいのは、暗号資産市場が株式市場に比べて歴史の浅い市場だからです。2020年、2021年はビットコインの価格高騰とともに市場規模が急速に拡大しましたが、今後は逆に下落続きのタイミングが訪れることも考えられます。しかし、株式市場の過去を振り返っても相場の下落を経験する中で市場は中長期的に成長していきます。
このことを踏まえて積み立てを行うのであれば、市場として成熟している株式よりも、まだまだ伸びしろのある暗号資産を選択する方が将来的に資産を増やせる可能性は大きいと考えられます。しかし、暗号資産で将来性を認められるものはごく一部であるため、まずは主要銘柄から検討する方が良いでしょう。また、繰り返しにはなりますが、ボラティリティにも耐えながら積み立てを続けることが重要です。