直近の価格動向
J-REITへの投資期間が長い投資家であれば、「またか」というような急落となった。東証REIT指数は1月14日に2021年4月2日以来続いていた2,000ポイントを割り込むと1月18日、19日と連続して前日3%を超える下落となり、21日には取引時間中に1,792ポイントまで下落する場面もあった。
これまで述べてきた通り、2021年のJ-REIT価格は外国人投資家への依存度が高い状態が続き、買い手の偏りが強い状態であった。そのため分配金というファンダメンタルズには懸念が少ない中でも急落となり、買い手不在が露呈する形になった。
その後1月20日以降はいわゆる「半値戻し」となり、1月26日には東証REIT指数が1,900ポイント台を回復している。
中小型オフィス中心の銘柄は割安感強い
価格急落に伴いJ-REITは、割高感が解消された状態になっている。利回り投資商品としての側面が強いJ-REITとして見れば、比較的高い利回りでの投資が可能な銘柄も大幅に増加した。その中で投資家の懸念が強すぎるために割安感が強くなっている銘柄として、中小規模のオフィスを主体としている銘柄を取り上げたい。
東京のオフィスビル賃貸市況は、コロナショックとなった2020年3月から悪化が続いている。オフィス賃貸大手の三鬼商事の調べに拠ると東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)のオフィスビル空室率は2021年10月に6.47%まで悪化し、その後は横這いとなっている。
2021年11月25日のコラムで述べた通り、オフィスビルの空室率はリーマンショック後の傾向と同様に当面は悪化しないと考えている。しかしリーマンショック後と大きく異なる点として、リモートワーク進展の影響が今後は賃貸市場に影響を与える可能性が高い。
中小企業でリモートワーク可能なテナントは、既に実施していると考えられる。この点は、中小規模のビルが多く職住接近が実現しているためテナントのリモートワークのニーズが低い福岡市内のオフィスビル空室率が2021年12月末時点も4.53%と低く、賃料単価も2021年4月以降は上昇基調が続いていることからも窺える。
したがって今後は大企業のテレワーク導入の影響が賃貸市場に波及してくることになる。大企業の場合はテレワークに舵をきっていても、定期賃貸借契約により一定期間オフィスビルを解約できないことが多いためだ。
さらに2023年には東京都内で大規模ビルの大量供給が予定されている。従って大型ビルを中心に保有する銘柄は、賃貸収益ベースでの下落懸念が当面つきまとう可能性が強い。
一方で大規模ビルと中小規模のビルでは賃料単価に大幅な乖離が存在している。つまり大規模ビルの空室率が、大量供給に伴い悪化することになっても中小規模のビルに入居しているテナントの移転先となる可能性が低いと考えられる。
したがって、中小規模オフィスを中心に保有する銘柄は、今後の業績予想の開示が進めば投資家の過剰な懸念の解消から価格が反発する可能性もありそうだ。
具体的には、利回りが5%を超える状態になっている「いちごオフィスリート投資法人」(8975)や4.5%を超えている「日本リート投資法人」(3296)が挙げられる。
さらに両銘柄とも1月27日時点の当期以降の業績予想には、物件売却益が含まれていないことからこれまでの決算期と同様に売却益の計上による増配も期待できる点もプラス材料と考えられる。