◆昨日は「成人の日」であった。オミクロン株の感染拡大が懸念される中、成人が集う式典をとりやめた自治体もある一方で、3万6000人あまりが新成人を迎えた横浜市は横浜アリーナで大規模な成人式を開催した。暴言かもしれないが、この際「成人式」という行事はやめたらどうか。今年の4月1日から、成年年齢が18歳に引き下げられる。18歳の多くは高校3年生だ。受験シーズンの真っただ中で「成人式」に出席する人は限られるだろう。

◆いっそ、「成人の日」という祝日自体も廃止すればいい。祝日ということは、なにか「おめでたい」ものを祝うわけだが、成人になるのがそんなにめでたいか。ただ18の年齢を重ねるだけで誰でも成人になる。喜寿や米寿とは次元が違う。成人とは、大人としての責任を果たす能力を認めるということだ。だが、当然、そこには個人差があって、若いのにとても大人らしい考えや振る舞いができる人がいる一方で、まったく未熟な人もいる。年齢という定規だけで「大人であること」は測れない。

◆今日、東京証券取引所は、4月に発足する新市場で、上場企業がどこに所属するかを公表する。最上位のプライム市場には東証1部の9割程度にあたる1800~1900社が移行する見通しだが、このうち300社近くは上場基準に達しておらず、「経過措置」の適用を受ける。「経過措置」とは、基準を満たしていなくても、達成に向けた計画書を提出すれば希望する市場に移行できるというものだ。

◆つまり、大人の要件を満たしていなくても、「自分は大人なんだ」と背伸びをすれば大人の仲間入りができるということだ。その条件は「いずれ、大人になりますから」という空手形を切るだけでいい。しかも、いつまでに条件をクリアするかという期限も定められていない。今回の市場改革が骨抜きと批判されるのも当然だ。

◆これに比べたら、年齢が18に達するだけで自動的に大人扱いされる成年制度のほうがよほど厳しいかもしれない。中には大人になりたくない人もいるだろうが、世間と法律は待ってくれないからだ。やっぱり、成人の日のお祝いは残してやろう。その代わり、東証で鐘を鳴らす上場セレモニーを廃止すればいい。理由はふたつ。こんな市場に上場することがそんなにめでたいことではないこと。もうひとつは、派手に祝って企業経営者に上場=ゴールだと勘違いさせないためである。