先週は世界的には欧州ソブリン問題が再び懸念され始め、米国株も軟調ムードですが、中国本土市場は反発が続き、1ヶ月振りの高値水準に戻りました。中国株の反発を支えている材料は大きく分けて2つあります。1つは金融緩和への期待です。前回指摘したように、中国の2012年第1四半期の経済成長率が予想を下回り、過去3年間で最低の伸び率となったり、2012年3月の輸入の伸びが大幅に減速するなど、中国経済のスローダウンを示す経済統計の発表が続いています。

そして、4月18日には新華社通信が中国人民銀行(中央銀行)関係者の話しとして、預金準備率引き下げなど、中央銀行が市場の流動性を高める可能性があると報じました。これでGW前にも預金準備率引き下げの可能性があるのではないかとの思惑が拡がっている模様です。

中国株の株価の反発を支えているもう1つの大きな材料は中国国内の金融改革です。4月11日に中国人民銀行の周小川総裁が、中国の金融改革では「大胆な措置」をとる必要があると表明しました。温家宝首相が国内国有銀行の独占状態を打破しなければならないと激しく非難したことを以前お伝えしましたが、これも金融改革を進めるために行われたものです。どういうことかといいますと、現在、中国経済の大部分は銀行も含めて国営企業によって担われています。

ところが例えば、国営大手銀行は国営大企業を得意先としており、民営企業(中小企業)は相手にしない傾向があります。これにより民営企業の成長が阻害されていると温家宝首相は指摘しているわけです。中国が民営企業を育てようとしている背景には、健全な市場メカニズムを導入しようとしていることがあります。国営大企業は市場原理を顧みずに、過剰に生産したり、生産設備を拡大したりと、杜撰な経営をしているところが数多くあります。

これまで中国は急成長を遂げてきましたので、仮に大量に在庫が余っても次の急成長期の需要で処理しきれたのですが、いよいよGDP成長目標を引き下げるなど、これまでの非効率なやり方では通用しなくなってきました。そのためにも中国経済・社会に健全な市場原理を導入する必要があり、そのために市場経済に敏感な民営企業(中小企業)を育成しようとしているわけです。このような背景から金融改革によって恩恵を受けると見られる有力民営企業が上昇し、相場上昇を支えました。

株式市場の話とは別に、先週のもう1つの大きなニュースは中国人民銀行が人民元対ドルレートの変動幅をこれまでよりも0.5ポイント拡大し1%にしたことです。日本でも大きく報道されました。しかしこの実質的な意味は、国際的な人民元切り上げ圧力をかわすためのもの過ぎないと思われます。つまり「中国は人民元の自由化に向けて努力しているよ」というポーズです。変動枠が拡大されたところで、人民元相場は依然として中国人民銀行に管理されている現状は変わりません。これに加え、中国の貿易黒字が減少していることから、人民元の切り上げ圧力が以前よりも少なくなってきたことがあり、変動枠を拡大しても大きな矛盾は生じないと判断したものと思われます。いずれにしてもこちらの方は大きく報道されたものの、相場に影響はなかったようです。