中国人民銀行が1年8ヶ月ぶりに利下げ

12月前半の中国株ですが、中国本土市場は横ばい、香港市場は続落となっています。12月6日終値から12月20日終値までの騰落率は、上海総合指数が+0.1%、香港ハンセン指数が-2.6%となっています。

中国本土株が横ばいとなっている理由は政策期待によるものです。中国当局は中央銀行(中国人民銀行)にも規律検査を行いました。建前上は大手不動産企業や大手IT企業と癒着していないかどうかといったところの調査のようです。

建前はともあれ、検査に入ったと同時に中国人民銀行はこれまでに示唆していた金融政策の見方を転換する形で預金準備率を引き下げ、さらに12月20日にはローンプライムレート1年物を1年8ヶ月ぶりに引き下げてきました。

これらの動きを見ても習近平政権が景気の落ち込みを気にしているのは明らかです。これが政策期待につながって中国本土市場は比較的堅調な株価推移となっているわけです(中国本土には厳しい規制強化を受けているIT大手企業が上場していないこともありますが)。

香港市場が大幅下落している要因

一方、香港市場は大幅下落が続いています。これにはいくつか理由があります。まず1つはオミクロン株への懸念や米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ観測、そして足元ではマンチン米上院議員が民主党の取りまとめた約2兆ドルの歳出法案について支持しない構えを見せたことから、米国株が調整基調となっている余波を受けていることがあります。

2つめの理由は米政府が(禁輸対象リストである)エンティティー・リストに中国企業を新たに追加したことや、画像認識システムの中国AI最大手センスタイム・グループ(00020)に対する米国人の証券投資の禁止を決定したことなど、米中関係の悪化があります。中国当局からの規制強化に加え、これらの悪材料によって中国大手IT株が大きく下落しており、香港ハンセン指数の足を引っ張っています。

中国本土株は政策期待からやや堅調に推移も、香港株は調整局面が続くか

一方、習近平政権が景気のスローダウンに懸念を示しているように、12月に発表された中国の経済指標は軟調なものが多いです。

まず、11月のCaixin中国製造業PMIは49.9(市場予想50.6、前月実績50.6)と景況感の境目である50を下回り、市場予想も下回りました。

その他、11月のCaixin中国サービス業PMIは52.1(市場予想53.0、前月実績53.8)、11月の輸出は22.0%増(市場予想20.3%増、前月実績27.1%増)、11月のCPIが2.3%増(市場予想2.5%増、前月実績1.5%増)、11月の小売売上高は3.9%増(市場予想4.7%増、前月実績4.9%増)、鉱工業生産は3.8%増(市場予想3.7%増、前月実績3.5%増)、固定資産投資は5.2%増(市場予想5.4%増、前月実績6.1%増)となっており、市場予想を下廻る経済指標が多くなっています。

今後の見通しですが、中国本土株は中国人民銀行が金融緩和の方向に動いていることや、景気失速を懸念した中国当局から財政政策が出てくる可能性も踏まえると、政策期待で比較的堅調な推移が続くのではないかと思います。

上海総合指数を見ても、株価は調整したとはいっても、50日移動平均線や200日移動平均線の上方に株価は位置しており、下落トレンドが鮮明という状況とはなっていません。しかしその一方で、中国IT企業が時価総額の大きなウェートを占める香港株は、もうしばらく軟調な動きが続きそうです。

度重なる株価下落により、中国IT企業のバリエーションは魅力的水準まで下がって来てはいるのですが、中国政府の締め付けや米中間の争いが今後どうなっていくのかなど、不透明な要因が大きく、どこが底値になるのか判断が難しい状況です。

もちろん、優良銘柄に関しては、安値時は長い目でみて仕込み時ではあるのですが、チャートの底打ちが確認出来るのを待ってから投資を検討するのが1つの方法だと思います。