米2年債利回りの短期的な「上がり過ぎ」
先週の米ドル/円は一時114円後半まで続伸しましたが、週末にかけては113円台半ばへ反落となりました。特にこれといった米ドル反落のきっかけがあった感じもしません。ただ、急ピッチでの米ドル/円上昇を経て、115円の節目を前にして米ドル高に行き詰まり感も出ていたことから、一旦米ドル買いポジションの手仕舞いが広がったということではないでしょうか。
ところで、114円台までの米ドル/円上昇を正当化してきたのは金融政策を反映する日米2年債利回り差米ドル優位の急拡大でした(図表1参照)。この金利差の主役である米2年債利回りは、先週は0.4%台半ばまで一段と上昇しました(図表2参照)。
現在のようなゼロ金利政策+量的緩和(QE)といった米国の超金融緩和は、いわゆる「リーマン・ショック」後の「100年に1度の危機」と呼ばれた局面でも行われました。しかし、2014年1月からのテーパリング開始でその政策がいよいよ転換に向かう見通しになると、金融政策を反映する米2年債利回りも0.5%程度まで一段高となりました。その意味では、先週にかけての米2年債利回りの急騰も、11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でのテーパリング開始決定を織り込む動きということではないでしょうか。
ただし、これを90日MA(移動平均線)からのかい離率でみると、過去最高のプラス80%以上までの拡大となります(図表3参照)。要するに、早期テーパリング開始を織り込む米2年債利回り急騰も、短期的にはさすがに空前の「上がり過ぎ」になっている可能性がありそうです。
以上のように見ると、米2年債利回り上昇に連れた米ドル/円の上昇も一段落し、米2年債利回りが短期的な「上がり過ぎ」の反動により低下するようなら、それに連れて米ドル反落リスクが試される展開となってもおかしくない局面を迎えている可能性があるのではないでしょうか。
米ドル反落の考え方
少し悩ましいのは、米ドル/円自体でみると、90日MAからのかい離率も特に短期的な「上がり過ぎ」懸念が強いというほどではないことです。米ドル/円の90日MAからのかい離率は、経験的にはプラス5%以上に拡大すると短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まりますが、未だそこまでには至っていません(図表4参照)。
また、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、先週にかけて売り越しが10万枚まで拡大しました。しかし、これまでの実績からすると、特に円の「売られ過ぎ」懸念が強いというほどではなさそうです。
低金利の円は買うより売るリスクが取りやすいため、過去の実績を見る限り、売り越しが10万枚を大きく上回る中で「売られ過ぎ」懸念が強まっていくということでしょう(図表5参照)。
要するに、米ドル/円自体に、米ドル「上がり過ぎ」、円「売られ過ぎ」といった「行き過ぎ」懸念が強いということではまだなさそうですが、米ドル高・円安をリードした米国の超金融緩和政策の転換を織り込む米2年債利回り上昇に、短期的な「行き過ぎ」懸念がかなり強くなっているということです。
その意味では、米ドル/円の反落リスクは、あくまで米2年債利回りが短期的な「上がり過ぎ」の反動によりどの程度下がるかといった間接的な影響が鍵を握ることになるのではないでしょうか。
ちなみに、最近の米ドル/円は週間値幅が1.5円前後に拡大しています。先週末にかけて米ドルが113円台半ばへ反落したのも、115円を超えられず114円台で米ドル高が行き詰ったことから、値幅拡大が米ドル下落方向への圧力になったと考えることも可能でしょう。
このような週間値幅を参考にすると、今週米ドル/円が114円を大きく上回れないようなら、米2年債利回りの低下次第では113円割れへ米ドルが続落する可能性もありうるのではないでしょうか。