介護保険証を持っているだけでは、介護保険のサービスを利用することはできません。申請をして、「支援や介護が必要」と認定されて、ようやくスタート地点に立つことができます。今回のコラムでは、介護保険を利用する最初の段階で知っておきたい大切な4つのポイントを紹介します。

介護保険を使って適切なサービスを利用する4つのポイント

1:介護保険の「認定調査」は普段通りの対応を心がける

介護保険のサービスを利用するためには、役所や地域包括支援センターに申請し、「支援や介護が必要」と認定される必要があります。

【図表】
出所:厚生労働省老人保健課「要介護認定の仕組みと手順」

申請を行うと、市区町村の職員などが「認定調査」を行うために自宅を訪れますが、この時に注意したいことがあります。図表1の通り、認定調査は全部で74項目もあり、内容は多岐に渡ります。

(例)
「片方の足で約1秒間立てますか」
「自分で食事がとれますか」
「外出すると1人では戻れないことがありますか」などと問われます。

この時、遠慮やプライドから普段以上に元気な姿を示そうとする人がいます。しかし、「問題はありません」「1人でできます」と答え続けることにより、実際よりも要介護度が低く出てしまうことがあるのです。そうなると、本来使えるはずのサービスを利用できなくなる可能性があります。

一方で「何もできませんと答える方が有利なのか?」とばかりに、「できません」を連呼する人もいますが、このような対応もおすすめできません。

調査員は介護のプロなので、大袈裟に言えば見抜かれるでしょう。また、要介護度が重い場合には同じサービスを利用しても要介護度が低いときよりも料金が高くなる場合もあります。つまり、元気に装う必要も、重度に装う必要もなく、普段通りに答えることが大切なのです。

調査内容には、「身体機能・起居動作」「生活機能」「認知機能」「行動・心理症状」「社会生活への適応」といった項目があります。

本コラムの最後(※)に74項目の内容を記載しますので参考にしてください。

2:ケアマネジャーは後から変更可能、あまり迷い過ぎないで

要介護度が決定すると、通常「ケアプラン」を作成してもらいます。今後どのような生活を送りたいかを考え、そのためにどのようなサービスを、どれくらいの頻度で、どの事業所から利用するかを計画するものです。

「要支援」の場合は地域包括支援センターのスタッフに、「要介護」の場合は居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーにケアプランの作成を依頼します。役所から事業所の所在地が書かれた一覧表をもらえるので、自分で選択します。自宅近所の事業所や、かかりつけの病院の関連事業所、口コミなどで選ぶ人が多いようです。

この時「自分に合った良いケアマネジャーを選びたい」という気持ちから、考えすぎて決断できない人がいます。

確かに、ケアマネジャーは「介護」の現場では重要な人物です。けれども、1回くらい話す程度で「良い人」かどうかを見極めることは容易ではありません。

そのため、あまり迷い過ぎることなく、「この人なら話を聞いてくれそう」と思ったら、お願いすることをおすすめします。ケアマネジャーは後から変更可能です。相性もありますので、しばらく付き合ってみましょう。それで馴染めそうになければ、その時に他のケアマネジャーに替えれば良いと思います。

3:介護保険サービスに関する不安や疑問を溜めこまない

介護保険で利用できるサービスは多岐に渡ります。ホームヘルパーが自宅に来て介護を行う「訪問介護」や、日帰りで施設に通ってケアを受ける「デイサービス」はよく知られています。

しかし、他にも様々なサービスがあります。例えば、手すりを備えたり段差を撤去したりする住宅改修があります。また、要介護度が重くなると、車いすや介護用ベッドをレンタルすることもできます。

どのようなサービスを利用すれば、自分の生活が快適になるのか、といったことは、最初はよくわからないと思います。そのような時は、地域包括支援センターのスタッフやケアマネジャーに相談してください。

また、デイサービス1つを取っても、歌や折り紙などレクリエーションに力を入れているところもあれば、スポーツジムのように運動に力を入れているところもあります。

要介護者や介護者の生活の質をアップするためにも、不安や不満、疑問点は溜めこまないことが大切です。遠慮しないで相談しましょう。

4:要介護度の認定結果が低すぎる場合は「区分変更」を申請する

「要介護度が低すぎる」と思うことがあるかもしれません。実際、「それは低すぎるのでは…」と思う認定結果が出ることもあります。

認定結果に不満がある場合は、不服申し立てをすることもできます。けれども、不服申し立ては審査結果が出るまで数ヶ月かかるので、疑問に思う場合はケアマネジャーに相談し、「区分変更」の申請を行いましょう。

これは、心身の状態が変わった場合に、次の更新を待たずに認定調査を行ってもらう方法です。主治医にも、再度、意見書を書いてもらう必要があります。簡単に言えば、認定調査のやり直しです。1ヶ月くらいで結果が出ます。

この「区分変更」によって必ずしも要介護度がアップするわけではありませんが、上がれば、申請日まで遡って新しい要介護度でサービスを利用することができます。

繰り返しになりますが、疑問や不満は溜めこまずに、何かあれば専門家に相談しましょう。相談すれば、何らかの提案をしてくれると思います。賢くサービスを利用することで、1日でも長く、自分らしい暮らしを続けたいものです。

(※)参考【介護保険の認定調査で聞かれる74項目】
出所:厚生労働省の資料をもとに筆者作成