みなさん、こんにちは。自民党総裁選から衆議院議員総選挙へといった「買い」材料を背景に、日経平均株価は地合いの強い展開が続いています。

懸念が一気に顕在化した中国不動産企業の破綻リスクも当面影響は限定的との観測が高まり、一旦急落した株価も短期間でその前の水準を取り戻すこととなりました。引き続き、金利動向などマクロ経済や中国景気失速への懸念は残るものの、私は選挙における熱い論戦が株価を支えるという構図が継続すると予想しています。

注目度が高まるオンライン診療

さて、今回は「オンライン診療」をテーマに採り上げてみましょう。オンライン診療は新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、感染予防を目的に初診患者にも時限的に解禁されたことで2020年に一気に注目が集まりました。

オンライン診療はこれまでも通院中の治療に限って可能ではあったのですが、初診時点では触診や聴診、血液など各種検査のできる対面診療でなければならない、とされていたのです。

もちろん、症状をできる限り確認した上での診断が結果的に誤診を防ぐ近道であることを考えれば、この「規制」に違和感はありません。しかし、未知の病気である新型コロナウイルス感染症の蔓延を前に、時限的とは言え、初診も可能という画期的ともいえる方針転換が実現したのです。

当然ですが、これには対面に近い診察を実現できるようになった通信技術や画像技術、通信端末の進歩があったからこそであることは言うまでもありません。

実際のところ、オンライン診療による医師・患者双方のメリットは少なくありません。医師は院内感染リスクを抑制することができる上、診察における自身の疲労度も対面ほどではないだろうと想像します(我々の日常においてもリモート会議の疲労度は実際の疲労度と比較するとかなり軽いように思います)。

患者にしても、通院中の転倒や二次感染を引き起こすリスクなどを回避できる上、通院交通費の抑制も可能です。現在はまだ時限的措置ですが、今後、オンライン診療が順調に運用され、一定の効果が確認されるようになれば、より恒常的な解禁となる可能性も出てくると予想したいところです。

とはいえ、オンライン診療の利用率はまだまだ低いのもまた事実です。ある調査では初診解禁から1年を経ても利用率がまだ6.8%という結果もあるくらいです。

確かに理論上はメリットが大きいのでしょうが、実際には通信システムなどの対応が間に合っていない、対面に比べて症状確認が難しい、といった医師・病院側の事情に加え、本当にきちんと診察してもらえるのだろうかという患者側の不安がオンライン診療の足枷となっているように思えます。

オンライン診療の浸透、利用率の上昇には、診療ノウハウの蓄積が進み、このような心理的不安やインフラ不足の解消が必須になるものと言えるでしょう。

AI活用によるデータ分析の進化に期待

オンライン診療に関連した株式投資という観点ではどうでしょうか。まずは、オンライン診療のインフラを提供する企業に注目が集まるでしょう。

患者側からスマホやPCなどを通して送られてくる様々なデータを漏らさず受け止めることができるような専用のモニターや処理能力の高いPCや通信環境、そして電子カルテも同時に作成できるようなシステムなどを開発している企業です。

いずれも一般仕様とは異なり、医師的見地から使い勝手の良いものが求められるはずです。これはオンライン診療が普及するのと同時並行で仕様の工夫・改善がなされていくものと予想します。これはある程度医学領域に特化し、継続的に仕様の改善を図ることのできるインフラサービス企業がその主役になるということです。

オンライン診療をテーマに物色された企業は既に幾つかありますが、利用率が低いという現実から見て、現時点ではまだ「手掛けている」という段階がほとんどでしょう。そのような中から、インフラ産業としての覚悟を持ち、少々のコストアップは先行投資と割り切って現場の仕様ニーズ対応に力点を置く企業がいち早くその集団から抜け出していくのではないかと考えます。

同時に、患者側にもオンライン診療の予約から受診、その後のフォローまでを一括で管理できるようなアプリのニーズが出てくるのではないでしょうか。既にそのようなアプリの開発を進めている企業も出てきているようです。

そして究極的にはAIシステムベンダーへのビジネスチャンスの広がりを期待します。オンライン診療では、顔色や目、舌などを医師はカメラを通して診ることにとどまり、これまでの五感をフル活用して得られた経験則があまり活用できなくなってしまいます。

当然、それに伴って誤診のリスクも高まります。そこで、見る側の医師からは単なるモニターを用意するだけでなく、画像データを瞬時に解析できるようなシステムへのニーズが高まってくるのではないでしょうか。

既に、検温システムのように、カメラを通して体温などは簡単に測ることができます。これは患者側のカメラ機能が充実される必要もありますが、そのようなものがなくとも医師側のモニターに映る患者の情報をAIで分析することができれば、医師も(オンラインにもかかわらず)より多くのデータを活用することができるはずです。これはひいては患者側のメリット拡大にも繋がるでしょう。

現在はまだAIが判断できるほどのデータは蓄積されていないのではと推察しますが、遠からず、そのような手法が一般的になってくる公算は大きいと考えます。病院、診察はAI化によって大きく変化する業態の1つになると私は考えています。