CPIへの過剰反応リスク

14日発表の米8月CPI (消費者物価指数)の上昇率が予想を下回ったことをきっかけに、米金利が低下、それに連れる形で米ドル/円も、15日には一時109円割れに迫るまで下落が拡大した。これまでも指摘してきたように、9月に入り、とくに9月第一月曜日の米国レーバーデイの後から、為替相場にも一方向に動きやすい傾向があった。その意味では、今回も上述のCPIはあくまできっかけで、例年通りの展開といえるかもしれない。

では、このままさらに「米金利低下=米ドル下落」が広がるかといえば、9月15日付けのレポート(「米金利低下=米ドル安シナリオの限界」)でも書いたように、せいぜい108円前半程度までの米ドル安といった具合に、自ずと限界があるのではないか。

そして、もう1つ気になるのは、今回のCPIの結果で米金融緩和見直し、いわゆるテーパリング見通しの後退とするのは、やや過剰反応の懸念があるのではないかということ。金融市場関係者が注目した8月末のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長によるジャクソンホール講演では、テーパリングを開始する上で、すでに物価の条件についてはクリアしたとの見解だった。

以上のように見ると、CPI発表後、これで9月FOMC(米連邦公開市場委員会)でのテーパリング決定はなしといった決め込みは、論理的にはやや先走りの懸念がありそうだ。CPIの結果を過大視することで、逆に9月FOMCでのテーパリング決定「サプライズ」といったリスクにも注意する必要をもたらしているかもしれない。