米長期金利低下に相関しない米ドル/円

米ドル/円相場は109~110円台でのレンジ相場となっています。

2021年は102円台で取引をスタート、マーケットには100円割れの円高予想が渦巻いていましたが、0.9%台にあった米長期金利(米国10年債利回り)が1.7%へと急上昇する過程で米ドルが金利に連れ高となり、米ドル/円相場も大きく上昇しました。

米国は高いインフレ率と労働市場の回復から、米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和政策の金融正常化へと舵を切るのではないか、と言ういわゆるテーパリング開始の時期を巡る議論が闊達ですが、足元では米長期金利は1.2%台にまで下落しています。

年初からの金利上昇局面では大きく上昇した米ドル/円相場ですが、1.7%から1.2%へと金利が反落していく中でも米ドル/円相場はあまり下落していません。何故、現在は金利低下に米ドル/円相場が反応していないのでしょうか。

リスクオン、リスクオフで為替はどう動く?

そもそも、為替市場の変動要因は金利だけではありません。貿易収支などの為替需給も為替に及ぼす影響が大きいほか、投機筋らの仕掛け的なポジションが相場を動かす局面もあります。

また、株や商品価格などのリスク資産が上昇する「リスクオン相場」では米ドル安となり、反対に株や商品が下落する「リスクオフ相場」では米ドルが高くなるという「マネーの流れ」が為替市場で大きなテーマとなることもあります。

リスクオン

あらゆる投資家は投資成果を上げるためにリスク資産に投資しますが、政治や経済の先行きに不安が少なく、金融緩和政策が続いているなど余剰資金が潤沢な場合に積極的となります。投資家らの保有する現金から「値上がりする資産」に投資が進むため、米ドルが売られ株や商品の価格が上がります。

リスクオフ

地政学リスクやパンデミックなど予期せぬリスクで景気の先行きに不安が生じると、株や商品などの価格の上昇が続かない可能性がでてきます。投資家らは暴落する前にと我先にリスク資産を手仕舞って現金化するのですが、この「キャッシュ化」の動きが株・商品安を招き、キャッシュである米ドルの価値を高めます。

リスクオフで売られる豪ドル、カナダドル

足元では米国株も調整気味であるとは言え、決して下落相場に入ったようには見えません。S&P500は2020年3月のコロナショックの安値から2021年8月には2倍となっており、強気相場を維持しています。

株式市場だけを見ていると現在がリスクオフ相場には見えないのですが、商品市場では原油、鉄鉱石、銅、パラジウム等が崩れており、資源通貨とされる豪ドルやカナダドルの下落が顕著となっています。

商品価格上昇とともに買われる資源通貨は商品価格下落とともに売り圧力が強まる傾向が強く、為替市場を見ているとリスクオフ相場となっていることで米ドル高が顕著となってきていることが伺えます。

上がらぬ米長期金利が示唆するものとは

また、米長期金利(米国債利回り)は上昇していない、ということは米国債が買われているということです。現金の次に安全資産とされているのが世界最大の流動性を持つ米国債です。

足元で米国債が買われ金利が低下しているということは現在がリスクオフ相場であることの証左なのかもしれません。米ドル金利が低くても、米ドル高傾向が顕著となっているのは、リスクを警戒する投資家によるキャッシュ化の動きによるものではないか、と私は考えています。